古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』


20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)
(2012/01/26)
古賀 史健

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 昨日は、フードコーディネーター/食育研究家の藤原勝子さんを取材。藤原さんは、日本で初めてフードコーディネーターを名乗った斯界の重鎮である。

 藤原さんが編集に携わられた、『おうちでスクールランチ39――全国各地の人気No.1給食レシピ』(群羊社)という本の紹介記事のための取材。
 「ダサくてマズいものだった日本の学校給食が、いまではこんなに進化して素敵な『スクールランチ』になっているんですよ」というのが取材テーマだったのだが、お話が「食育とは何か?」みたいなところにまでどんどん広がっていき、そのいちいちが私にとっては目からウロコ。とても刺激的な取材になった。


 行き帰りの電車で、古賀史健著『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書/882円)を読了。

 この著者が構成した『われ日本海の橋とならん』(加藤嘉一)を読んで、まとめ方のうまさに舌を巻いたという話を先日このブログに書いた。で、「只者ではないな」と思い、著書を読んでみたしだい。本書は今年1月に刊行された、この人の初の単著である。

 タイトルどおり、大学生くらいのライター志望者がメインターゲットになっているとおぼしき本だが、一般向けの文章読本としても上出来だ。

 著者略歴欄には、次のような一節がある。

 出版社勤務を経て24歳でフリーに。30歳からは書籍のライティングを専門とする。以来、「ライターとは“翻訳業”である」「文章は“リズム”で決まる」を信念に、ビジネス書や教養書を中心に現在まで約80冊を担当。編集者からは「踊るような文章を書くライターだ」と言われることが多い。



 著者は私より9歳若いが、仕事をしてきた分野が近い(書籍の構成仕事中心という意味で)こともあって、シンパシーを覚える。

 内容も、私にとってはいちいち納得のいくものだ。「本講義で述べた文章論・文章術は、すべて僕が“現場”で身につけた実学であり、机上の空論はひとつとして語っていないと断言できる」と著者が言うように、どのアドバイスも実践的で、ヴィヴィッドな現場感覚に満ちている。

 ほかの文章読本にもよくあるような平凡なアドバイスもないではないが、その場合にも著者の持ち出すたとえが面白かったりして、楽しく読ませる工夫が随所になされている。
 たとえば、文章におけるリズムの大切さを説明するくだりで、“ストーンズの演奏を牽引しているのはミック・ジャガーでもキース・リチャーズでもなく、じつはチャーリー・ワッツのドラムスだ”なんて話をさらっと入れたりとか。

 文章の初歩の初歩から説かれているにもかかわらず、プロのライターにも参考になる指摘が多い。私たちライターが経験によって身につけ、無意識のまま駆使しているテクニックの中身が、見事に言語化されている。わかりやすくて奥が深いのである。

 「まったくそのとおりだ」と感心し、付箋をつけた一節を引く。

 推敲するにあたって最大の禁句となるのが「もったいない」である。
 こんなに頑張って書いた箇所を削るなんて「もったいない」。
 せっかく何日もかけて調べたから、どこかに入れないと「もったいない」。
 あれほど盛り上がった話を入れないなんて「もったいない」。
 (中略)
 しかしこれは、読者となんの関係もない話だ。
 読者は、あなたの「がんばり」や「悩んだ量」を評価するのではない。あくまでも、文章の面白さ、読みやすさ、そして書かれた内容について評価を下すのである。
 文章を書いていて行き詰まったとき、「なんか違うな」と思ったとき、原稿を読み返してみると、けっこうな確率で「もったいないから残した一節」が紛れ込んでいるはずだ。
 そして、その一文を取り繕うためにゴニョゴニョと余計な説明を入れ、全体が台なしになっている。



 ライターのみならず、「もっとわかりやすい文章を書きたい」と思っている人に、広くオススメ。

 なお、本書の版元・星海社は講談社の子会社。昨年創刊された星海社新書には、タイトルを見ただけで面白そうなものが多い。今後注目したい。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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