柳沢きみお『なんだかなァ人生』


なんだかなァ人生なんだかなァ人生
(2011/12)
柳沢 きみお

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 柳沢きみお著『なんだかなァ人生』(新潮社/1470円)読了。

 『翔んだカップル』『特命係長 只野仁』などのヒット作で知られるベテラン・マンガ家の、初エッセイ集。
 ライフワークと位置づけていたエッセイ・マンガ『大市民』シリーズを打ち切られた柳沢は、それならばと、自ら『週刊新潮』編集部に売り込んで、長年の夢であったというエッセイの連載を勝ち取った。その連載をまとめたのが本書である。

 柳沢には『おれ流――柳沢的マンガの創り方』(朝日新聞出版)という著書もあるが、これはインタビューをまとめたものだったので、自分で文章を書いた著作はこれが初。

 文章はうまくないものの、素直でわかりやすい筆致に好感が持てるし、エピソードの豊富さ、多彩さで楽しめる一冊。
 創作の舞台裏の話は意外に少なくて、少年時代からの思い出や趣味(ギターや寿司屋めぐり、骨董品収集、クラシック・カーなど)についてのエッセイが多い。

 『翔んだカップル』は一時代を画した大ヒット作であったし、全盛期にはすごい収入があったはずだが、柳沢は稼ぎの大半を趣味や不動産取得などにつぎ込み、いまでは貯金ゼロなのだという。それどころか、自己破産寸前にまで追いつめられたことがあるというから驚きだ。
 バブル期に千葉の山奥の3千坪の大邸宅を4億円で購入し、それが要因で借金まみれになっていく顛末は、強烈な印象を残す。

 作品の舞台裏を明かしたエッセイも面白い。
 柳沢は最初『少年ジャンプ』を舞台に活躍していた人で、私はそのころの作品を小学生時代にリアルタイムで読んでいたが、本書によればジャンブ時代にはつらさしかなかったという。
 

 ジャンプ時代の専属制度と毎回の綿密な打ち合わせという、自由のまったく無い漫画家生活は、刑務所暮らしと同じような息苦しさ。イキナリ週刊連載を持つことになり、毎週一本の締め切りに追われるだけの苛酷な日々で、漫画家になれた喜びなどきまるっきりありませんでした。



 また、柳沢にとって近年最高のヒットとなった『特命係長 只野仁』についてのエッセイも面白い。あの作品は連載誌『週刊現代』の編集部側から提示された原案に沿って作られたもので、当初柳沢は乗り気ではなかったとか。

 あまり気乗りせず中途半端な気持ちで始めた「特命係長」が、まさか今日まで私の救いの神になろうとは、思いも寄りませんでした。



 私は、柳沢の作品では『男の自画像』と『流行唄(はやりうた)』が好きだ。あの2作について本書で触れられていないのは残念だが、わりと面白く読めた。

 一点気になったのは、エッセイの随所に、柳沢がうつ傾向に陥っていると感じるくだりがあること(「初老期うつ」の前兆かも)。元気でがんばってほしいものである。
 
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コメント

手の震えについて
腕立て伏せ回数やり過ぎです、有酸素運動になるので痩せます、週2・3回スローで10回3セット行って下さい、腕を広げると胸の筋肉、腕を平行にすると腕の筋肉が太くなります、痩せたい部分は回数多目に但しあまりやり過ぎると、老化と共に腕の震えみたいになります、いつも楽しみに読んでます、では又。
  • 2013-05-29│17:15 |
  • 筋肉オヤジ URL│
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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