小田嶋隆『その「正義」が危ない』


その「正義」があぶない。その「正義」があぶない。
(2011/11/17)
小田嶋隆

商品詳細を見る


 小田嶋隆著『その「正義」が危ない』(日経BP/1570円)読了。

 先日読んだ『地雷を踏む勇気』と同じく、「日経ビジネスオンライン」の人気連載「ア・ピース・オブ・警句」の単行本化である。

 『地雷を踏む勇気』には東日本大震災関連のコラムが多く選ばれていたが、本書はそれ以外のもので比較的最近のものが中心。
 『地雷を踏む勇気』は1本を除いてすべて今年書かれたコラムだったが、本書も今年のコラムが約半分を占めている。時事コラムゆえに、「旬」を重視したセレクトということなのだろう。

 「ア・ピース・オブ・警句」は2008年に始まっているが、連載初期のものはもう旬ではないと見なされたのか、すべて外れている。オバマ大統領登場について書いたものなど、初期にも名文が多かったので、これは惜しい。
 また、ITネタはすぐ古くなるからか、いずれもセレクトから外れている(例外として、スティーヴ・ジョブズ追悼文が本書に収録されているが)。ツイッター・ブームやiPadを取り上げた回も傑作だったと私は思うのだが。

 それでも、本書に選ばれたコラムはほとんどが傑作である。私はすべてサイトで一度読んでいるが、再読三読する価値は十分にある。

 大相撲ネタが3本あって(ドルジネタ、八百長問題ネタなど)、いずれも相撲論として秀逸だし、「小沢ガールズ」について取り上げた回など、政治評論家にも政治記者にも書き得ない、オダジマならではの政治論になっている(それでいてコラムとしてちゃんと面白いし)。

 メモしておきたくなるような名文、名ジョークも随所で炸裂。
 たとえば、「終章」として別枠扱いで載せられているジョブズ追悼文「グレートジョブズによせて」は名文だ。その印象的な一節を引く。

 一人の人間が世界を変えるわけではない。
 が、一人の人間のインスピレーションが、後の世代の若者のアタマの中味をごっそり入れ替えてしまうことは、必ずしも珍しい出来事ではない。ジョブズは間違いなくそれを成し遂げた男の一人だ。
(中略)
 私のアタマの中味を作ったものを、円グラフの中に書きこむのだとすると、おそらく、4分の1ぐらいを、コンピュータ関連のあれこれが占めることになる。で、そのうちの半分はアップルでできている。
 ということは、私のアイディアの12・5%はジョブズ由来だということになる。
 リンゴで言えば、ちょうど囓られてなくなっている部分ぐらいに相当する。
 感謝せねばならない。
 リンゴが落ちることを発見した男によって切り開かれた時代が近代であるとするなら、現代は、リンゴに歯形を付けた人間のインスピレーションに沿って動いている時代だ。未来がどうなるのかはもう誰にもわからなくなった。さようならジョブズ。



関連記事

トラックバック

コメント

思い切った省略
ご紹介の文章、思い切った省略により、あえて説明不足を起こしてでも遠慮無く削っている所が面白いと思いました。

たとえば、「リンゴで言えば」の部分は、「アップル社のマーク」である事を省略していますね。
また、「リンゴが落ちることを発見した男」とは、当然ニュートンの事でしょうが、「りんごが落ちることにより万有引力を発見した」と書くべきでしょう(笑)
文章の正確さよりも、読者がわかってもらえそうな範囲で、あえてすっきりとした美しさを求めるんですね。

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
34位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
25位
アクセスランキングを見る>>