佐野眞一『津波と原発』


津波と原発津波と原発
(2011/06/17)
佐野 眞一

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 佐野眞一著『津波と原発』(講談社/1575円)読了。
 ベテラン・ノンフィクション作家による、東日本大震災の被災地ルポ。

 随所に光る部分はあるものの、一冊の作品としてはやや物足りない仕上がり。
 佐野眞一にしては取材が浅い気がするし、全体に未整理でとっちらかった印象の本なのだ(本書執筆前に佐野は大病をしたそうだから、病み上がりで体力がなかったせいかもしれないが……)。
 「大部のノンフィクションを書くために作った未完成な取材ノートを、そのまま本にしてしまったような感じ」とでも言おうか。

 たとえば、第二部の終わりに、「福島第一原発に近いところで生まれ育った二人の研究者」――開沼博と松本哲男へのインタビューが一問一答形式で掲載されているが、唐突感が否めない。これは、本文の流れの中に組み込んで素材として使うべきではなかったか。

 また、第一部が震災直後の被災地を取材したルポであるのに対し、第二部(の第二章以降)は戦後日本の原子力政策と福島に原発が作られるまでの歩みを追った内容であり、両者が水と油になってしまっている。
 「被災者の苦しみの背後に、戦後日本の闇が鮮やかに浮かび上がる」というふうに、第一部と第二部に連続性が感じられればよいのだが、それが感じられない。第一部と第二部はまるで別作品になっちゃってるのだ。

 佐野の旧作『巨怪伝』(主人公・正力松太郎は「原子力発電の父」)や『東電OL殺人事件』の再利用みたいな部分も目立つし……。 

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Re: No title
上田さま

> 乾物屋の息子、海苔の区別はできても、善悪の区別ができないのか

いったいなんのことでしょうか?
  • 2012-10-18│19:40 |
  • 前原政之  URL│
  • [edit]
No title
乾物屋の息子、海苔の区別はできても、善悪の区別ができないのか
  • 2012-10-18│17:23 |
  • 上田 耕治 URL│
  • [edit]

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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