薬師丸ひろ子『歌物語』


歌物語歌物語
(2011/03/02)
薬師丸ひろ子

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 薬師丸ひろ子の2枚組ベストアルバム『歌物語』(EMIミュージックジャパン/3000円)を聴いた。

 我が少年時代のアイドルなので、懐かしいようなこそばゆいような、複雑な思いにとらわれる。ううむ、もう歌手デビュー30周年かぁ……。

 彼女のベストアルバムはこれまで何種類も出ているが、まちがいなく「これが決定版」といえる内容だ。ていねいにリマスタリングがなされていて音質がよいし、選曲もまあ納得できる。

 デビュー曲「セーラー服と機関銃」から、今年発表された久々の新曲「僕の宝物」(映画『わさお』主題歌)までが収録されたオールタイムベストである。

 過去のベスト盤では、権利の関係なのか、「セーラー服と機関銃」が井上鑑のニュー・アレンジで収録されたものが多くて興ざめだったが、本作ではちゃんと星勝アレンジのオリジナル・バージョンである。この、昭和の香り漂うモッサイ感じのアレンジがいいのだ。

 それにしても、いま思えばものすごく豪華な作詞作曲陣である。松本隆、大瀧詠一、松任谷由実(呉田軽穂名義)、南佳孝、大貫妙子、坂本龍一、細野晴臣、吉田美奈子、中島みゆき、来生たかお、上田知華、竹内まりや、井上陽水、筒美京平etc.

 歳月を経たことでファンとしての色眼鏡を外して聴いてみると、シンガー・薬師丸ひろ子の限界もはっきり見えてしまう。どんな曲を歌っても同じような一本調子のヴォーカルで、微妙なニュアンス、陰影に乏しいのだ。
 それに、彼女はロック的なリズム感が致命的に乏しい人で、ちょっとロック色の強い曲になるとまるで魅力がない(阿木耀子・宇崎竜童コンビの「紳士同盟」など)。

 だがそれでも、透き通ったマジメな声質(そう、彼女は声からして優等生的でマジメなのだ)はいまなお魅力的だし、素直に歌い上げるバラード・タイプの曲は素晴らしい。

 私が好きなのは、細野晴臣作曲の「紅い花、青い花」、井上陽水作詞作曲の「ステキな恋の忘れ方」、竹内まりや作詞作曲の「元気を出して」(この曲は竹内の歌で知っている人のほうが多いだろうが、あれは厳密にはセルフカヴァー。初出は薬師丸のファースト・アルバム『古今集』)、大貫妙子作詞、坂本龍一作曲の「DESTINY」あたり。

 欲を言えば、セカンド・アルバム『夢十話』所収の名曲「冷たくされたい」、のちに矢野顕子が『ピアノ・ナイトリィ』で絶品のセルフカヴァーをする「星の王子さま」(大貫妙子作詞、矢野顕子作曲)、シングル「Woman“Wの悲劇”より」のB面曲だった隠れた名曲「冬のバラ」(松本隆作詞、松任谷由実作曲)も入れてほしかった。
 ま、そのへんはファンの数だけ「理想の選曲」があるわけだけれど……。


↑29年前、受験生時代の薬師丸ひろ子。なんというかわいさ。このころの彼女はもう天使ですね。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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