和田秀樹『震災トラウマ』


震災トラウマ (ベスト新書)震災トラウマ (ベスト新書)
(2011/06/25)
和田 秀樹

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 和田秀樹著『震災トラウマ』(ベスト新書/820円)読了。

 精神科医の著者が、東日本大震災をふまえ、災害によるトラウマとの向き合い方、PTSD(Posttraumatic stress disorder/心的外傷後ストレス障害)への対処について平明に解説した本。

 巻末に「企画構成/関口かずみ」というクレジットがあるので、このライターが和田の話をまとめた本なのだろう。
 ……にしても、なかなかよくできた内容である。ものすごいペースで著書を出している和田だが、粗製濫造にはならず一定のクオリティを保っている点は好感。100点満点でいうと「80点以上の本は出さないが、60点以下の本も出さない人」という印象があるのだ(ホメているつもりだが、むしろ失礼かなw)。

 東日本大震災、とくに津波のすさまじい映像は、直接の被災者ではない私たちさえ、何日間か何もしたくないほどの憂鬱に陥らせた。ましてや、直接の被災者が受けた精神的ダメージは推して知るべしであろう。

 そのわりにはまだ、「震災トラウマ」によるうつ病の多発はニュースにならない。たぶん、本当の闘いはこれからなのだろう。本書によれば、被災後1ヶ月以降にあらわれる「慢性期」(「いつまで」という終わりはないそうだ)のトラウマのほうが、急性期よりも深刻になりやすいそうだから。

 本書は、そもそもトラウマとは何か、PTSDとは何かという初歩から説き起こし、阪神大震災で被災者のメンタルケアにあたった著者の経験もふまえて、震災トラウマの基本を過不足なく解説した好著。聞きかじりの知識でトラウマについてわかったつもりでいた私のような者には、まことに勉強になる。

 本書によれば、「自然災害によるPTSDの発症率は、被災した人の3~5%程度」なのだという。
 意外に少ない気もするが、東日本大震災ほどの大規模災害になれば被災者の数も甚大であるわけで、そのうちの5%がPTSDになったとしても大変な問題なのである。

 震災トラウマを受けてから、PTSDになるかならないかの分かれ目は何か?
 もちろん一つではないが、本書によれば、孤立感・孤独感が大きな要因だという。つまり、同じトラウマを受けても、周囲に支えてくれる人がいればPTSDになりにくい。逆に、「誰も助けてくれない」「私はひとりぼっちだ」と孤立感・孤独感を感じると、それがトラウマを強め、PTSDになりやすいのだ、と……。
 この話はたいへん示唆的だと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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