『つなみ 被災地のこども80人の作文集』


文藝春秋増刊「つなみ 被災地のこども80人の作文集」 2011年 8月号文藝春秋増刊「つなみ 被災地のこども80人の作文集」 2011年 8月号
(2011/06/28)


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 『つなみ 被災地のこども80人の作文集』(『文藝春秋』8月臨時増刊/800円)読了。

 東日本大震災で津波の甚大な被害を受けた宮城・岩手の子どもたちが、津波体験を書いた作文をまとめたムック。下は幼稚園から上は高校生まで、計80人の作文が収録されている。うち約半分は、子どもが書いた作文用紙をそのまま撮影して掲載している。企画・取材・構成は、ジャーナリストの森健。

 私が取材で赴いた石巻や気仙沼などの子どもたちもたくさん登場するので、読むごとに被災地の光景や出会った人々の顔が思い浮かんで、たまらない気持ちになる。

 小さい子どもの作文は言葉が拙くて事実関係がわかりづらいが、森が取材で得た情報を随時文章で補足しているので、それを併せて読むと、幼い言葉の背後にある重い事実に胸を衝かれる。

 4月10日におとうさんが、みつかり一週間後おとうさんのかそうを、しました。とてもざんねんでした。



 いまはまだ、「とてもざんねんでした」という言葉でしか気持ちを表現できない小学2年生の男の子。その行間に、どれほど深い悲しみがあり、ドラマがあるのか。

 読んでいて思い出したのは、矢野顕子の「たいようのおなら」。
 これは1981年のアルバム『ただいま。』に入っている9分半の“組曲”で、子どもたちの詩に矢野が曲をつけて歌ったもの。この中に「いぬ」という小曲がある。6歳の男の子が書いた詩に曲をつけたもので、「ぼくはいぬがだいすきです」などというたわいない言葉の連続なのだが、聴いていて涙が出るほどに哀切だ。
 本書に収録された小学校低学年の子どもの作文にも、同質の凄みを感じる。子どもならではの飾らない、幼い言葉だからこそ伝わるものもあるのだ。



 いっぽう、中学生、高校生ともなると文章力もついてくるので、体験した者のみが書ける津波の惨禍の表現に唸らされる。

 そして夕方。じいちゃんが言った。
「ばあちゃん、流されたがもな……」
 私とお母さんは泣いた。この事が妹と弟にバレないように、こっそりと。



 これは、大槌町の中学2年女子の作文。

 森が市・町ごとに取材後記のような形で寄せている短い文章が、とてもよい。これ自体、被災地の子どもたちの姿を描いたルポとして独立した価値がある。
 たとえば、次のような一節がある。

 前出の渡邊蘭さんははじめて自宅に戻ったとき、頑強なタイプの父が静かに泣いているのを見て驚いた。だが、蘭さんは震災後の数カ月で成長した自分を感じるとも語った。
「ふつうに会えていた友だちと、もしかしたら明日会えなくなるかもしれない。だったら言いたいことは言おうと思うし、後悔しないように生きようと思うようになりました」



 校庭には、親達が続々とやってきて、わが子の手を引いて、家に連れ帰った。だが皮肉なことに、高台にある学校から市街地に戻ったことで、命を落としてしまった児童も少なくなかった。



 被災地の子どもたちの写真もたくさん載っていて、その明るい笑顔にホッとする。大人たちより子どもたちのほうが、災害へのたくましい適応力があるように思う。

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コメント

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とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
  • 2011-11-20│12:30 |
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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