松尾スズキ・すぎむらしんいち『老人賭博』


老人賭博(1) (モーニングKC)老人賭博(1) (モーニングKC)
(2011/07/22)
すぎむら しんいち

商品詳細を見る


 ちょっと仕事に煮詰まってしまったので、書店に行き、コミックスを3冊ほど買ってきて息抜き。
 『海街diary』(吉田秋生)の4巻、『チャンネルはそのまま!』(佐々木倫子)の4巻、『老人賭博』(松尾スズキ原作・すぎむらしんいち画)の1巻、という内訳。

 3冊とも、安心のハイクオリティー。
 とくに『海街diary』は、吉田秋生が自らの代表作とすべく、力を込め、ていねいに描きつづけている印象。登場人物一人ひとりが本当の友人のように愛おしく思える作品になってきた。

 『老人賭博』を、私は松尾スズキの原作で読み、『モーニング』の連載も毎回読んでいるのに、コミックスで読み直すとやはり面白い。これからストーリーがどう進むか、全部知っている目で読んでも楽しめるのである。

 小説を原作としたマンガの、一つの模範形がここにはある。
 谷口ジローが夢枕獏の小説を劇画化した『餓狼伝』や、丸尾末広が乱歩の代表作を劇画化した『パノラマ島綺譚』のような、画力で圧倒するタイプとはまたちょっと違う。
 すぎむらしんいちの絵も十分魅力的ではあるが、絵単体のパワーというより、立ちのぼるムードと軽快なテンポ、ディテールの小さなひねりとくすぐり――それらの総和が醸し出す面白さなのだ。

 『老人賭博』の面白さと引き比べて改めて感じたことだが、前作にあたる『ディアスポリス』はいま思えば失敗作だった(連載開始当初は面白かったけど)。すきむらの絵柄には、ああいうシリアスな原作は致命的に合わないのである。

 『老人賭博』はおそらくコミックス3巻で完結だろうが、それまでこのテンションを保ったまま走りきってほしい。

■関連エントリ→ 松尾スズキ『老人賭博』レビュー

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
39位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
27位
アクセスランキングを見る>>