ジョセフ・ナイ『スマート・パワー』


スマート・パワー―21世紀を支配する新しい力スマート・パワー―21世紀を支配する新しい力
(2011/07/21)
ジョセフ・S・ナイ

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 ジョセフ・S・ナイ著、山岡洋一・藤島京子訳『スマート・パワ――21世紀を支配する新しい力』(日本経済新聞出版社/2100円)読了。

 「ソフト・パワー」という語の提唱者として知られる国際政治学者(ハーバード大学教授)が、ソフト・パワー/ハード・パワーの概念を用いて現今の国際情勢と今後の展望を解説したもの。同じく日経から邦訳が出ているナイの旧著『ソフト・パワー』『リーダー・パワー』につづく、「ソフト・パワー」シリーズ第3弾、という趣の本である。

 書名にいう「スマート・パワー」とはやはりナイの造語で、ソフト・パワーとハード・パワーを組み合わせた力のこと。2つの力を臨機応変に使い分け、状況に対処する外交戦略の謂である。

 「ソフト・パワー」という言葉が人口に膾炙するにつれ、誤解も多くなった。その代表的なものは、「ソフト・パワー=善・先進的」、「ハード・パワー=悪・時代遅れ」とする単純な二分法である。
 提唱者のナイ自身は一度もそんなことを言っていない。彼は、時代の変化につれてソフト・パワーの重要性が高まってきたと主張しているだけで、ハード・パワーがもはや必要ないとも、ソフト・パワーが無条件に善だとも言っていないのだ。
 本書にもこんな一節がある。

 ソフト・パワーは規範的な概念ではなく記述的な概念であり、ほかの力の形態と同じく、良い目的にも悪い目的にも使える。ヒトラー、スターリン、毛沢東は、支持者からみて強力なソフト・パワーをもっていたが、だからといってその力を良い目的のために使ったといえるわけではない。腕をねじあげるより、考え方を変える方が良いとはかぎらないのだ。



 ソフト・パワーとハード・パワーを適宜使い分けて賢明に国を動かしていく「スマート・パワー」の大切さについて、豊富な実例を挙げて説得的に論じた好著。とくに米国のもつ「力」について詳細に論じており、昨今の「アメリカ衰退論」への反論としても読みごたえがある。

 別途書評を書くのでこれ以上くわしく書けないのだが、ソフト・パワー/ハード・パワーについては下の関連エントリをご参照あれ。

■関連エントリ
ジョセフ・ナイ『ソフト・パワー』レビュー
ジョセフ・ナイ『リーダー・パワー』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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