すぎむらしんいち『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―』


ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(1) (シリウスコミックス)ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(1) (シリウスコミックス)
(2011/07/22)
すぎむら しんいち

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 すぎむらしんいちの新作『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―』の1巻(講談社シリウスコミックス/630円)を購入。

 『ネメシス』という講談社の季刊コミック誌(月刊『シリウス』の別冊)で連載中の新作。最近原作ものがつづいていたすぎむらの、久々のオリジナルである。

 すぎむらのマンガは、原作つきでも十分面白い。『モーニング』で連載中の『老人賭博』も、私はすでに松尾スズキの原作を読んでいるのに、それでも毎回楽しみにしているほどだ。

■関連エントリ→ 松尾スズキ『老人賭博』レビュー

 とはいえ、すぎむらの本領はやはりオリジナル作品にあるのであって、本作は単行本化を楽しみにしていた。

 なんと、ゾンビものである。
 「女(ジョ)ンビ」とは、その名のとおり「女のゾンビ」のこと。日本中の女たちが突如ゾンビ化し、男たちを食い殺していく。だが、童貞ひきこもり・ニートたちは普段女と縁がなかったがゆえに(笑)、食い殺されずに生き残る。
 生き残った童貞ひきこもりのボンクラ3人組と、ゾンビ化しないまま助かった美少女・ハルカちゃんの4人が、イーストウッド似の宅配便ドライバーに救出され、決死の逃亡をはかる……というストーリー。

 すぎむらしんいちのマンガは、一貫して「映画的」と評されてきた。当然、本人も筋金入りの映画マニアである。
 彼の「映画的」作風のピークともいえるのが、『ホテルカルフォリニア』や短編「スノウブラインド」で見せた洗練されたコーエン兄弟テイストであった。

 一方、本作は全編にわたって、意図的にB級映画テイストでつらぬかれている。きわどいエログロ描写、下ネタ全開の下品な笑い、たたみかけるスピーディーな展開……B級ホラー映画のテイストが巧みに取り込まれ、それでいてたんなるパロディには終わっていない。ちゃんと「すぎむらしんいちの世界」になっているのだ。
 なにしろ、本巻後半からの主舞台となるのが、オタクの殿堂「中野ブロードウェイ」なのだから、ジョージ・A・ロメロにだってこの味わいは真似できまい。

 ……と、知ったふうなことを書いているが、じつは私はゾンビ映画というものに微塵も興味がなく、ほとんど観たこともない。なので、本作にちりばめられているであろう過去のゾンビ映画へのオマージュやらパロディやらは、私にはよくわからないのである。
 ゾンビ映画に造詣の深い人なら、本作をもっと楽しめるのだろう。とはいえ、ゾンビ映画に門外漢の私が読んでも十分に面白かった。

 ブックデザインがVHSレンタルビデオの細密なパロディになっているなど、隅から隅まで映画好きらしいこだわりがつらぬかれた作りも楽しい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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