橘木俊詔『無縁社会の正体』


無縁社会の正体―血縁・地縁・社縁はいかに崩壊したか無縁社会の正体―血縁・地縁・社縁はいかに崩壊したか
(2010/12)
橘木 俊詔

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 昨日は取材で福岡へ――。
 早朝に出て夜に帰る強行軍。てゆーか、最近は国内なら日帰り取材があたりまえになってきた感じである。

 これで今月の取材はすべて終わり。あとは粛々と原稿を書き進めるのみ。



 行き帰りの飛行機で、橘木俊詔(たちばなき・としあき)著『無縁社会の正体』(PHP/1365円)を読了。
 これも仕事の資料として読んだ。同志社大学教授のエコノミストが、日本の「無縁社会」化の現状を概観して論じたものだ。

 「無縁社会」という言葉の発信源となった「NHKスペシャル」をまとめた本も私は読んだが、比べてみれば、概説書としては本書のほうがよくできている。「無縁社会」とはいかなる現象なのかが、「無縁死」(誰にも看取られず亡くなること)、未婚者の増加、家族の絆の希薄化などのテーマ別に、手際よくまとめられているのだ。
 「とりあえず一冊だけ『無縁社会』関連書を読んでおこう」と思っている人には、本書がオススメ。

 ただ、「よくまとまった概説書」以上のものではない。目からウロコが落ちるような分析は一つもなく、私たちが漠然と抱いている「無縁社会」のイメージが追認されていくのみの内容なのだ。
 
 とはいえ、さまざまなデータと図表を駆使して「無縁社会」の現状が数値の上から明らかにされていくので、資料的価値は高い。

 あと、本書はパートごとの出来不出来がかなり激しい。
 歴史に目を向けた記述は、総じてよい。たとえば、町内会の歴史的変遷をたどったり、哲学における「共同体主義」の歴史をたどったりしたくだりは、たいへん勉強になった。
 
 対照的に、最先端の現象を論じた部分に、薄っぺらい論述が目立つ。
 たとえば、「草食系男子」と「肉食系女子」について大真面目に分析しているのだが、これが失笑もの。そもそも、こんなチャラい流行語の中に、分析に値する内実があるとはとても思えないのである。本書全体の中でも、このくだりは浮きまくっている。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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