北尾トロ・下関マグロ『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』


昭和が終わる頃、僕たちはライターになった昭和が終わる頃、僕たちはライターになった
(2011/04/14)
北尾 トロ、下関 マグロ 他

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 北尾トロ・下関マグロ著『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(ポット出版/1890円)読了。

 人気ライター2人が、自分の駆け出し時代を振り返った本。対談集ではなく、2人が交互に同時期の思い出を綴っていくスタイルだ。

 トロとマグロというよく似たペンネームからも察せられるとおり、2人は駆け出し時代からの親友であり、近い場所、近い分野で仕事をつづけてきた。一緒に事務所を構えたり、同じ雑誌でコンビで仕事を受けたり、一緒に趣味のバンドを組んだり……。共著もいくつかあるし、年齢も同じだ。
 そんな2人がまだ20代だった1980年代の青春時代が綴られている。

 これは、すごく読者を選ぶ本だと思う。人気ライターとはいえ、彼らの個人的な思い出に興味を抱くほど熱烈なファンが多いとは思えない。
 さりとて、ライター入門として役立つかといえば、時代も違うので微妙。少なくとも、本書を読んでもライターとしてのスキル向上にはつながらない。「駆け出しのフリーライターって、だいたいこんな感じですよ」というサンプルにはなるだろうが……。

 私は、すごく面白く読んだ。しかしそれは、彼らの駆け出し時代が私自身の駆け出しライター時代とほぼ重なるからである。
 2人は私より6つ年上なのでデビュー時期こそ少しタイムラグがあるものの、1980年代半ばから終わりにかけて、駆け出しライターとしておおむね似たような経験をしてきたのだ。
 だから、読みながら身につまされて仕方なかった。四半世紀前の自分を見ているようだった。

 しかし、私同様に本書に共感を覚えるような読者は、日本中でせいぜい3000人程度しかいないだろう(本書の初版部数もそんなものではないか)。それくらい、およそ普遍性のない特殊な青春記なのである。

 なので一般にはオススメできないが、ライター歴、あるいは編集者歴・カメラマン歴・デザイナー歴が長くて出版界/雑誌界の昔話ができる人なら、楽しめる本だ。

 駆け出し時代のトロとマグロは、駆け出し時代の私がそうであったように、未熟で無知で、そして貧しい。80年代後半といえばバブルに向かう好景気時代だったわけだが、そこからポツリと取り残されたように、登場する駆け出しライターたちは揃いも揃ってビンボーだ。
 だが、未熟で無知な駆け出しライターのところにも次々と仕事が舞い込んできたのだから、それもやはりバブルの恩恵にほかならないのである。出版業界全体に、いまよりはるかに余力があったのだ。

 ネットどころかパソコンもワープロも黎明期で、ライターは手書きの原稿を電車で届けに行った時代。私もその時代の片鱗を知っているが、本書はそんな時代の証言として貴重である。

 本書の内容は大してドラマティックでもないし、主人公2人は怠惰でヘタレで、少しもカッコイイところがない(失礼!)。だがそれでも、私は深く共感した。

■関連エントリ→ ライター業界の昔話

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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