ひじかた憂峰・たなか亜希夫『リバースエッジ 大川端探偵社』


リバースエッジ大川端探偵社 3巻 (ニチブンコミックス)リバースエッジ大川端探偵社 3巻 (ニチブンコミックス)
(2011/05/28)
ひじかた 憂峰

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 ひじかた憂峰作・たなか亜希夫画の劇画『リバースエッジ 大川端探偵社』(日本文芸社)の既刊1~3巻を購入。連載誌の『漫画ゴラク』でときどき読んで、とても気に入ったので。

 ひじかた憂峰とは、狩撫麻礼の別ペンネーム。
 狩撫麻礼とたなか亜希夫といえば、かつての名作(怪作でもあったが)『迷走王ボーダー』のコンビだ。関川夏央と谷口ジローのコンビと並ぶくらい、この手の男臭い劇画の世界では黄金コンビといってよい。

 が、この『リバースエッジ 大川端探偵社』は、『迷走王ボーダー』よりもむしろ『ハード&ルーズ』に近い作品である。
 『ハード&ルーズ』は、狩撫麻礼作・かわぐちかいじ画。私立探偵・土岐正造を主人公にした短編連作で、1980年代を代表するハードボイルド劇画の一つであった。私は、あれこそ狩撫麻礼の最高傑作ではないかと思う。

 この『リバースエッジ 大川端探偵社』は、小さな探偵社に持ち込まれるさまざまな依頼から生まれるドラマを描いた短編連作。まさに“21世紀の『ハード&ルーズ』”ともいうべき作品なのである。

 もっとも、基本構造こそ共通だが、『ハード&ルーズ』とは微妙にテイストが違う。
 『ハード&ルーズ』では主人公のキャラクターが作品の大きな比重を占めていたが、『大川端探偵社』では探偵社の面々は狂言回しに徹している。依頼人と探す相手が織りなすドラマこそが核となるのだ。

 また、依頼人が持ち込む謎を解くプロセスは、あっさりと端折って描かれている。海千山千の老練な「所長」が、特異な人脈を駆使して電話だけで解決してしまうことも多いのだ。この点も、調査のプロセスが詳細に描かれ、その間にアクションなどの要素が詰め込まれていた『ハード&ルーズ』とは対照的だ。

 要するに、『ハード&ルーズ』からハードボイルド探偵小説的要素を削ぎ落とし、かわりに依頼人たちの人間ドラマに力点を置いたのが、この『大川端探偵社』なのである。

 とはいえ、むろん共通項も多い。元ボクサーが登場したり、風俗嬢やホームレスなど“良識の外側”にいる人々に優しい視線が向けられたりするあたりは、狩撫麻礼らしさ全開だ。

 調子の出ない回もあるが、平均すれば『ハード&ルーズ』と遜色ないくらい魅力的なストーリーが多い。中には鳥肌が立つようなすごい話もある。好みもあろうが、私の場合、「カラオケドリーム」「座敷牢の男」「夏の雪女」「ある結婚」の4話は鳥肌ものだった。

 たなか亜希夫の緻密で空間造形力に富む絵も、相変わらず素晴らしい。『ハード&ルーズ』が好きだった人にオススメ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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