![]() | 中央モノローグ線 (バンブー・コミックス) (2009/10/17) 小坂俊史 商品詳細を見る |
一昨日は盛岡で、作家の高橋克彦さんを取材。これも大震災の関連取材。東北に居を構える作家として、震災についての思いを語っていただく。高橋さんは昨年電話取材したことがあるが、お会いするのは初めて。
昨日は、石川県七尾市で企業取材。2日つづけての日帰り地方取材で、しかも私には珍しく3日連続で早朝の電車に乗ったので、ほとほと疲れた。今日は昼まで爆睡。
小坂俊史(こさか・しゅんじ)の『中央モノローグ線』(竹書房/780円)を購入。
いつも読んでいる『漫棚通信ブログ版』さんがホメていた(→こちらのエントリ)ので、気になっていた作品。
『まんがライフオリジナル』に連載された4コマ・マンガで、JR中央線沿線に住む8人の女性たちのモノローグ形式で描かれる物語。
中野に住むイラストレーター・なのか、高円寺の古着屋店主・マドカ、西荻窪の劇団員・茜、三鷹の大学生・ミカ、武蔵境の中学生(連載中に高校生になる)・キョウコなど、8人の女性たちのモノローグを通じて、中央線それぞれの街の個性がさりげなく巧みに表現されていく。
4コマ・マンガだから「笑い」が大きな要素ではあるが、爆笑ではなく「クスッ」あるいは「ニヤッ」とさせられる上品でおとなしい笑い。その中には「中央線あるあるネタ」も多いが、べつに中央線のことを知らなければ面白くないわけではない(「中央線歴」が長い人ほど楽しめるのは間違いないが)。
それに、この作品には「笑い」以外の魅力もある。「物語」と書いたとおり、4コマ・マンガでありながら、女性たちのモノローグの背後にライフストーリーが透けて見えるのだ。読み終えるころには一人ひとりが自分の友人に思えてくるくらいに……。
そして、「笑い」と同じくらいの配分で「切なさ」もある。これはいわば「4コマ青春マンガ」でもあるのだ。
業田良家は名作『自虐の詩』で、4コマ・マンガでも長編マンガ真っ青の感動を与えられることを証明してみせた。この『中央モノローグ線』には『自虐の詩』ほどの感動はないものの、「4コマ・マンガの歴史に新たな1ページを刻んだ」といってよいほどの独自性がある。こんなふうに、キャラクターのさりげない日常を描きながら人生を感じさせる4コマは、これまでなかった。シンプルでキュートな絵もいい感じだ。
中央線歴四半世紀の私は、本作の舞台になった8つの街をそれぞれよく知っているので(ただし、武蔵境はそれほどなじみがないが)、なおさら楽しめた。
難を言えば、武蔵境以西の国立や国分寺、そして我が街・立川も舞台にしてほしかった。
武蔵境に住むキョウコちゃんのモノローグに、「ここはその名の通り『境』の街で――/中央線はここを過ぎると一気に普通っぽくなってしまうため/私たちは三鷹の向こうに強い憧れを持って暮らしています」という一節がある。
これにはちょっと異を唱えたいなあ。国立・国分寺・立川はそれぞれ強い個性を持っているし、よくも悪くも中央線的だと思うから……。
とか言いつつ、我々立川市民も23区内に出かけることを「都内に行く」なんて表現するのだけれど(笑)。
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