林望『「時間」の作法』


「時間」の作法  角川SSC新書 (角川SSC新書)「時間」の作法 角川SSC新書 (角川SSC新書)
(2011/03/10)
林 望

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 林望著『「時間」の作法』(角川SSC新書/819円)読了。

 職業柄、仕事術や時間管理術の本を見ると手に取らずにはいられない。時間管理術の本もけっこうたくさん読んできた。そのわりには時間の使い方は一向にうまくならず、「ああ、また時間を無駄にしてしまった」としょっちゅう後悔している私である。

 何が根本的な問題かといえば、私たちフリーランサーには会社員の勤務時間のような縛りがないことと、行動を律するための人目がないこと(=書斎でどんなにダラダラしていようと、誰にも見咎められない)の2つなのだな。

 では、ライター同士で共同事務所でも構えればいいかというと、それはそれで別の問題が生じる。つい無駄話をしてしまったり、すぐ一緒に飲みに行ってしまったり……。
 時間を無駄なく使うことは、フリーランサーにとって永遠の課題なのだ。

 さて、本書だが、思いっきり期待外れの内容であった。

 そもそも、タイトルがひどい羊頭狗肉だ。
 このタイトルでは誰もが時間管理術の本だと思って手に取るだろうに、時間管理がテーマになっているのは全9章中の2つの章だけ。で、ほかの章には何が書かれているかといえば、メモ術、読書術、文章作法、英会話を学ぶコツ、上手なスピーチのコツ、風邪を引かないための心構え(!)など……。
 要は広い意味での「リンボウ流仕事術」の本でしかない。にもかかわらずこんなタイトルをつけるのはいかがなものか。

 それでも仕事術の本として役に立てば腹も立たないが、その点でもかなりのダメ本であった。とにかく、あたりまえのことしか書かれていない。

 たとえば、読書術についての章にはこんな一節がある。

 インターネットの利点は何かというと、一つのニュースに関連する情報を、数カ月前からさかのぼって読めることです。新聞やテレビで過去の情報を知りたくても、その日、その時間のことしかわかりません。
(中略)
 それに、テレビの場合は芸能ニュースのように私にはまったく興味のないニュースでも見続けていないと次のニュースに進めませんが、インターネットであれば自分で見出しを見ながらニュースを選べるので、仕事をやりながらちょいちょいと読むことができる。
 この、自分の都合で時間のかけ方を調整できるというネットニュースの性格は、時間を無駄なく使う上でとても重宝なものです。



 2011年に刊行された本の一節とはとても思えない。いまどき、これを読んで「へーえ、インターネットってそんなに便利なのかぁ」と感心するような読者がいるだろうか。

 時間管理をテーマにした章が2つあると書いたが、それらの章がまた輪をかけてしょーもない内容なのだ。たとえば、こんな一節がある。

 何かの仕事をしているとしたら、「今は二時四十五分だから、四時までに終わらせよう」とか、あるいは原稿を書いているときであれば、「この章はだいたい五時くらいになって目鼻がつくだろう」とか、そういう時間の戦略を立てていく。
 それが終わったら、次は「晩飯を作ろう」、またその次は「ご飯を何時までに食べ終えよう」と、自分の頭の中で先へ先へとタイムマネジメントを重ねていきます。



 「仕事を四時までに終わらせよう」とか「ご飯を何時までに食べ終えよう」なんてこと、「時間の戦略」「タイムマネジメント」というほど大層なことかよ(笑)。ごく日常的な思考の断片じゃん。

 じつは私は林望の著作は初めて読んだのだが、ほかの本でもこんな調子なのかね? エッセイストクラブ賞を受賞したりしているのだから、エッセイはもっとまともなのだと思うけど。

 前にも一度書いたことがあるが、時間管理術の本で私のイチオシは、メリル・E・ダグラスの『決定版 時間を生かす』(知的生き方文庫)である。古い本だが、本書などよりもはるかに有益で、示唆に富む名著だ。

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コメント

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とても魅力的な記事でした!!
また遊びにきます。
ありがとうございます!!
  • 2011-09-24│16:14 |
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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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