エルダー・ジャンギロフ『エルダー』


エルダーエルダー
(2005/05/18)
エルダー・ジャンギロフ

商品詳細を見る


 エルダー・ジャンギロフの『エルダー』(ソニー・ミュージック)を聴いた。

 現時点での最新作『ヴァーチュー(美徳)』がよかったので、こんどは6年前のデビュー・アルバムに手を伸ばしてみたしだい。レコーディング時まだ17歳だった天才少年の、「ファースト・ジャンプ」が刻みつけられた作品だ。

 ライナーノーツで紹介されたデビューまでのいきさつを読むと、絵に描いたような「天才物語」である。
 3歳でピアノを始めたエルダーは、5歳のころにはもう、聴いた曲をすぐにピアノで再現できたという。家族でキルギス共和国から米国に移住したのも、息子の才能の開花を両親が願ったためだったのだ。

 このファースト・アルバムではまだ、本名のエルダー・ジャンギロフ名義。ジャケット裏面などに載った写真があどけない。

 全11曲中7曲がスタンダード・ナンバーで、4曲がオリジナル。
 あたりまえの話だが、『ヴァーチュー(美徳)』のほうが曲も演奏も成熟していて、本作はまだ粗削りな印象。スタンダードのうち何曲かで度肝を抜く速弾きを披露するのだが、それがなんだかサーカスの軽業のようで、あまり心に響かない(上原ひろみの速弾きにもときどきそんな印象を受けるが)。

 たとえば、ハービー・ハンコックの名曲「処女航海(Maiden Voyage)」を、原曲よりはるかにテンポを速めて演奏しているのだが、「うまい」とは思っても「いい」とは思えなかった。やはり原曲のほうが数段上である。


↑エルダー・ジャンギロフの「処女航海」

 とはいえ、17歳で一流のプロと比べて遜色ない演奏ができるというのは、やはりすごいことだが……。

 このアルバムにおいてはむしろ、オリジナル曲で発揮された作曲能力に非凡なものを感じた。
 たとえば、「ポイント・オブ・ビュー」という曲は、それこそ『処女航海』『スピーク・ライク・ア・チャイルド』のころのハービーが作ったようなモーダルな傑作だ。
 また、「ウォーターメロン・アイランド」という曲も素晴らしい。タイトルからしてハービーの「ウォーターメロン・マン」を意識した感じの、ファンキーでダンサブルなナンバー。2曲とも、10代の少年が書いたとはとても思えない。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
39位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
27位
アクセスランキングを見る>>