古泉智浩『ミルフィユ』


ミルフィユミルフィユ
(2000/11)
古泉 智浩

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 古泉智浩の短編マンガ集『ミルフィユ』(青林工藝舎/1155円)を読んだ。

 少し前に読んだ『ジンバルロック』がたいへん面白かったので、ほかの作品も少しずつ読んでいく予定。
 『ジンバルロック』が古泉の初単行本で、この『ミルフィユ』は2冊目であるようだ(ほかにもたくさん出している)。

 が、収録作は総じて『ジンバルロック』より一段落ちる感じ。「あれ? 意外に面白くない。それに絵がすごくヘタなものもある」と、首をかしげつつ読む。
 初出を記したあとがきを読んで納得。本書の収録作のほとんどは、『ジンバルロック』以前の初期作品なのだ。 古泉のブログによれば、現在40代前半の彼が「20代に描いた恋愛とセックスのマンガ作品集」とのことだ。

 9編を収めた本書で私が気に入ったのは、「ポラロイド」と「人魚の恋」の2編。そして2編とも比較的新しく、『ジンバルロック』と同時期くらいに描かれたものと思われる。
 それ以前の古い作品は、箸にも棒にもかからない習作という感じ。つまり、古泉は『ジンバルロック』連載中に作家として覚醒したというか、急成長したのだと思う。

 「ポラロイド」は、童貞をこじらせて悶々としたバカ予備校生が主人公のエロ・コメディ。爆笑。古泉はこういうのを描かせるとバツグンである。

 「人魚の恋」は、キムタクそっくりのイケメンなのになぜかブスにしかもてない主人公(笑)が、山田まりあ系のムッチリした人魚と恋をする物語。

 人魚が現代日本の現実の中に溶け込んで登場する青春マンガといえば、小玉ユキのリリカルな連作短編集『光の海』を思い出す。ただし、人魚が出てくる点だけが共通項で、あとはまるで別世界。こちらは下品で身も蓋もない笑いが展開されている。
 「私に下ネタ描くなというのは、イチローにバットを振るなと言ってるのと同じだ!」と言ったのは下品マンガの雄・田中圭一だが、古泉も下品さでは田中に負けていない(ホメている)。
 ただ、ゲラゲラ笑ったあとにふっと切なさが残るのが古泉作品の特長で、本作もそれはしかり。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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