内田樹・高橋源一郎『沈む日本を愛せますか?』


沈む日本を愛せますか?沈む日本を愛せますか?
(2010/12)
内田 樹、高橋 源一郎 他

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 内田樹・高橋源一郎著『沈む日本を愛せますか?』(ロッキング・オン/1575円)読了。タイトルはいま見ると不謹慎な印象だが、むろん震災前に刊行(昨年暮れ)されたものである。

 ロッキング・オンの季刊総合誌『SIGHT』に連載された対談の単行本化。計7回に及んだ対談のテーマは、すべて日本の国内政治である。民主党政権の誕生からその後の迷走まで、日本政治が揺れに揺れた激動期にあって、2人の知識人が考えたことが刻みつけられている。
 両著者とも政治は専門外だが、だからこそ、「既存の政治メディアの政治言語とは違う語り口」が刺激的な一冊だ。

 インタビュアーというか司会は、ロッキング・オンの社長・渋谷陽一。司会の役割を踏み越えて随所で話に割り込んでおり、実質的には3人の鼎談になっている。

 すこぶる頭のよい2人のオジサンが、「政治のシロウト」ならではの意表を突く直観を炸裂させる、いわば「高級床屋政談」という趣の本。
 政治記者や政治学者には絶対にできない、大胆不敵な見立ての連打。“その場の思いつき"の域を出ないヨタ話も多いものの、5回に1回くらいはクリーンヒット、すなわち目からウロコが落ちる卓見がある。

 いちばん新鮮だったのは、一章を割いて語られる小沢一郎論だ。
 以前このブログで、小沢についてこう書いたことがある。

 安部晋三が総理を辞めたときに鬱病の可能性がさかんに指摘されたが、私は小沢一郎こそ、かなり重いトラウマを抱えて生きている人なのではないかと思う。
 政権が手に入りそうになったり、「いよいよ自分の天下」という状態になるたびに、「でーい!」とちゃぶ台ひっくり返すみたいにすべてをパーにする行動パターンは、フロイトの言う「反復強迫」そのものではないか。あれはもう、「小沢さんのいつものワガママが……」などというレベルの話ではなく、「病理行動」なのだと思う。



 私がなんとなく感じていたそんな「病理」の内実が、本書の対談では「小沢は自己処罰をする」という視点から見事に言語化されており、思わず膝を打った。
 内田さんの発言から、関連箇所をピックアップしてみる。

 小沢一郎ってさ、敗者のポジションを進んで選んでるんじゃないの?
(中略)
 これってある種の「自己処罰」なんじゃないのかな。自分で自分の足元を崩しておいて、「また今度もダメだった……」っていう。
(中略)
 「敗者」っていうのが自己規定の原点だからさ。だから、勝者になりそうになると、わざと足を踏み違えて、階段から転げ落ちたりして(笑)。そういうのって、フロイトの言うところの失錯行為の典型じゃない。日の当たるところに出そうになると、つい日陰に引きずり込まれてしまう。その点では病気だよね。



 両著者とも、ある政治現象をピッタリはまるキャッチフレーズに置き換えるのがバツグンにうまい。たとえば、コロコロと首相が変わる昨今の政治状況を「ザッピング状態」「テレビのチャンネルをすぐ変えるのと同じ。だから、番組がその先どうなるか、見ていない」と表現したり、首相交代時のみはね上がる内閣支持率を「支持率バブル」と呼んだり……。

 ほかにも印象的な一節がたくさんあった。たとえば、内田さんの宮崎駿についてのこんな発言。

 やっぱり、世界に一番近い人っていうのはね、逆に、非常にターゲットが近いんだよ。具体的な、生身の日本の子供たちっていうのを、しっかり見据えてる。やっぱりそこからしか、世界に流通するようなクオリティって出てこないと思うよ。なんとなく「世界に向かって発信」とか言ってるとダメなのよ。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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