村上たかし『続・星守る犬』


続・星守る犬続・星守る犬
(2011/03/16)
村上 たかし

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 村上たかしの『続・星守る犬』(双葉社/880円)が出ていたので、さっそく買う。

 犬好きなら涙なしには読めない、“21世紀の『ハチ公物語』”ともいうべき作品だった『星守る犬』。続編となる本書は、正編で死んでしまった「おとうさん」と愛犬「ハッピー」とかかわりのある犬と人の物語だ。

 ハッピーの双子の弟犬と、それを拾った老婆の物語「双子星」。正編でおとうさんとハッピーが死ぬ間接的な原因を作った「財布泥棒少年」のその後を描く中編「一等星」。それに短い描き下ろしの「エピローグ」が収録されている。

 正編のつけたり・蛇足という印象はない。むしろ、正編と続編を併せて初めて物語が完成した、という趣。
 読んでいて思い出したのは、こうの史代の『夕凪の街 桜の国』だ。周知のとおり、あの作品は「夕凪の街」とその続編「桜の国」という2つの短編からなっていた。
 以前、『夕凪の街 桜の国』のレビューで私は次のように書いた。

 続編の「桜の国」は、それから半世紀後――つまり現在の物語。ヒロインは、亡き皆実の姪(弟の娘)・七波だ。
 「夕凪の街」はずしりと重い見事な「悲劇」だが、これだけで物語が完結してしまったのでは、あまりに救いがない。皆実に代わって姪の七波が前向きに生きていく続編を描くことで、物語に一条の光が射しこむ。そしてまた、「桜の国」は、「夕凪の街」の悲劇を現在へと結ぶ回路ともなるのだ。



 同じことが、『星守る犬』の正・続編についても言える。
 『星守る犬』も、ある意味「救いのない」物語だった。主人公のおとうさんは職を失い、家庭を失い、最後には犬ともども死んでいくのだから。
 しかし、この『続・星守る犬』に収められた2編と「エピローグ」によって、幾重にも「救い」がもたらされる。

 病気で死にかけていたハッピーの弟犬はおばあさんに救われ、「罪」を背負った泥棒少年は祖父との暮らしの中で救われる。そして「エピローグ」では、おとうさんとハッピーを捨てたかに見えた家族がおとうさんを探しているというエビソードによって、死んだおとうさんにも救いがもたらされるのである。

 また、登場人物たちも、それぞれが犬によって「救い」を得る。嫌われ者の因業ばあさんは、拾った犬との暮らしの中で、忘れかけていた人情と生への希望を取り戻す。親からの虐待の果てに心を閉ざしていた泥棒少年は、ペットショップから盗んだ売れ残りのパグ犬とのふれあいによって、子どもらしさを取り戻していく。

 そのような「救済」の物語であるから正編ほどには泣けないが、ていねいに作られた上出来の続編だ。
 通俗的といえば通俗的だし、「手塚治虫文化賞」とかを得るような作品ではあるまい。それでも、私は好きだ。正編に感動した人なら一読の価値あり。

 ちなみに、西田敏行主演で映画化されたそうだ。ううむ、観たいような観たくないような……。

映画『星守る犬』公式サイト 

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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