ジョン・カーリン『インビクタス~負けざる者たち』


インビクタス~負けざる者たちインビクタス~負けざる者たち
(2009/12/21)
ジョン カーリン

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 ジョン・カーリン著、八坂ありさ訳『インビクタス~負けざる者たち』(NHK出版/2100円)読了。

 クリント・イーストウッドが監督した同名映画の原作にあたるノンフィクションである。仕事の資料として読んだ。映画もよかったが、本書もていねいな取材をふまえた力作だ。

 1995年のラグビー・ワールドカップで南アフリカ・チームが成し遂げた奇跡の優勝と、そこにネルソン・マンデラ大統領が果たした役割を追った作品。
 アパルトヘイト撤廃後も、南アの黒人と白人の間に依然としてあった深い溝――。マンデラはワールドカップを、その溝をなくすための突破口にしようと考えた。そして、並外れたリーダーシップと人格の力で、その計画を見事成功させたのである。

 マンデラが大統領になったとき、黒人たちを虐げ、自らを27年間も牢獄に追いやった白人たちに、報復することもできた。そうしたほうが、黒人たちの共感は得やすかっただろう。しかしマンデラはそうせず、かつては敵だった白人たちと手を携えて国を動かしていく道を選んだ。

 そして、その選択のシンボルとして、ワールドカップにおける南アチーム「スプリングボクス」を用いたのである。アパルトヘイト時代、ラグビーは白人たちのスポーツであり、黒人たちの関心は薄かった。しかしマンデラは、自らが率先してスプリングボクスを応援することで、国中を熱狂の渦に巻き込んでいく。

「スポーツには、世界を変える力があります。人びとを鼓舞し、団結させる力があります。人種の壁を取り除くことにかけては、政府もかないません」(ネルソン・マンデラ)



 もちろん、ワールドカップを通して南アが一つにまとまったのは、マンデラというたぐいまれなリーダーがいたからこそである。本書は、マンデラの行動を通してリーダーのあるべき姿を語ったリーダー論としても読める。

 『インビクタス』に先行してマンデラを描いた映画に、『マンデラの名もなき看守』があった。あの映画においてもそうであったように、マンデラという人は、敵を打ち倒すのではく、敵をも味方に変えてしまう「ソフトパワーのリーダー」なのである。本書の著者も、マンデラを「プレジデント・オブ・ヒューマニティ」と評している。

■関連エントリ→ 『マンデラの名もなき看守』レビュー
 
 映画『インビクタス』のストーリーに対応しているのは本書の後半で、前半ではそこに至るまでのマンデラの歩みが語られている。前半もよくまとまっているのだが、たんに映画の原作が読みたいという人は後半だけ読んでもよいかも。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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