石井光太『地を這う祈り』


地を這う祈り地を這う祈り
(2010/10/20)
石井光太

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 石井光太著『地を這う祈り』(徳間書店/1680円)読了。

 途上国の路上生活者など、世界最貧困層をおもな対象とした取材旅を重ねてきた著者が、それらの旅で撮影した写真を集め、文章を添えたフォト・エッセイ集。

 これまで石井作品を読んだことがない人にとっては、「石井光太ワールド」への格好の入門編となるだろう。
 また、過去の石井作品の舞台裏を垣間見られる本でもあるから、石井ファンが読めばいっそう味わい深い。たとえば、『レンタルチャイルド』に登場した全身疣だらけの物乞いや、物乞いをするときに同情を引くために腕を切り落とされたストリート・チルドレンなどの写真も掲載されている。

 写真のみのページも多いのであっという間に読み終わるが、読後感はずしりと重い。たとえば、シンナーを吸って味覚を麻痺させたうえ、水で濡らした新聞紙を食べて空腹をしのぐエチオピアのストリート・チルドレン……などという衝撃的エピソードの連打だからである。

 写真の合間に挟まれた短いエッセイや、巻末の「取材の裏側――石井光太への14の質問」では、石井が自らの取材作法を明かしていて興味深い。
 「石井光太はなぜこんなにすごいエピソードを集めてこられるのか?」という読者の疑問への答えが、ここにはある。たとえば――。

 私が話を聞きたいと思う人の多くは、一般社会から差別された人々だ。物乞いであり、ハンセン病患者であり、子供兵である。エリートのガイドでは、案内することができない。
 そこで、私は一つの目安として、話を聞きたいと思っている人と同じような立場の人間をガイドにすることにしている。ハンセン病患者であればハンセン病患者をガイドにする。物乞いであれば物乞い、子供兵であれば元兵士や傷痍軍人などに頼むのである。日本だって、ホームレスのことはホームレスが一番詳しく知っているだろう。海外とて、それは同じなのである。



 取材というのは、かならず当初の「予想」を覆すものです。たとえば、少女売春婦はイヤイヤながらに売春宿で働かされているんだろうな、と考えて行ってみると、十一、二歳の子たちがあぐらをかいて笑いながら、
「今日、私は五人もお客さんがついたのよ」
 なんて自慢してきたりする。
 取材とは想像を粉々に壊すためにすることなのです。この大切に抱えていた予想や価値観がひっくり返る瞬間こそが一番面白いところですね。


(だからといって、組織的少女売春が肯定されるべきでないのは言うまでもないし、石井もそんな意味で言っているわけではあるまい。為念)

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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