![]() | イマジン・プロジェクト (2010/07/21) ハービー・ハンコック 商品詳細を見る |
今日は、打ち合わせが一件、原稿の〆切が2本。
明日からは取材で、2泊3日で滋賀県まで――。
ハービー・ハンコックの『イマジン・プロジェクト』を聴いた。今月発表された第53回グラミー賞でも、収録曲2曲が賞を得た話題作。
タイトルの印象からジョン・レノンのカバー集かと思い込んでいたのだが、そうではなかった。「イマジン」のほか、ビートルズ時代の「トゥモロー・ネバー・ノウズ」を取り上げているが、ほかはボブ・ディランやピーター・ガブリエルなど多彩なアーティストのカバーなのである。
前作『リヴァー』はジョニ・ミッチェルのカバー集にもかかわらず本格的なジャズ・アルバムになっていたが、今作は全曲ヴォーカル入りでもあり、ジャズというよりゴージャスなポップ・ソング集である。『ポシビリティーズ』以来の歌もの/コラボ作品集の集大成という趣。
■関連エントリ→ ハービー・ハンコック『リヴァー』レビュー
“ハービー版「ウィ・アー・ザ・ワールド」”と評する向きもあった本作。たしかに、「“平和と地球規模の責任”をアルバム・コンセプトに、ジャンルにとらわれない視点から人選された豪華ミュージシャンが参加し、7ヶ国で録音された」という経緯から、そんな印象も受ける。
だが、実際に聴いてみれば、「ウィ・アー・ザ・ワールド」ほどクサくはない(笑)。洗練されたポップ・アルバムとして、若者からオジサンまで楽しめる内容に仕上がっている。BGMにするもよし、じっくり聴き込んでもよしというアルバム。オシャレなのにパワフルだ。
ラテンもあればレゲエもあり、正統アメリカン・ロックもあればソウル・クラシックもあり、インド音楽もあればアフリカや中東の音楽もあり……と、ジャンルと言語と文化の壁を超えてよい音楽、素晴らしいミュージシャンを集め、1枚のアルバムとしてまとめあげるハービーの力業に脱帽である。
ジャズ・ピアニストとしてのハービーを期待する向きには、一見肩透かしに映るアルバムかもしれない。だが、プロデューサー的役割に徹しているようでいて、やはり要所要所はハーピーの見事なピアノが全体を引き締めているあたり、さすがだ。「時代は変わる」の終盤やラストの「ソング・ゴーズ・オン」のピアノなど、鳥肌ものである。
グラミー賞を得た「イマジン」と「チェンジ・イズ・ゴナ・カム」もよいが、個人的には「ここに死が/エクソダス」と、「ソング・ゴーズ・オン」の2曲が気に入った。
前者は、サハラ砂漠の遊牧民のグループ「ティナリウェン」の曲とボブ・マーリィの名曲を合体させたもの。後者はインドのムンバイでのセッションで、リルケの詩にメロディをつけた曲をシタールを核に演奏し、インドの人気歌手チットラとチャカ・カーンがデュエットするもの。
これだけごった煮/異種交配の曲なのに、聴きやすいコンテンポラリー・ポップ・ミュージックとして見事に完成されている。これぞワールド・ミュージック、これぞクロスオーバー、という感じだ(「ワールド・ミュージック」も「クロスオーバー」も死語かもしれないが)。
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