池澤夏樹編『本は、これから』


本は、これから (岩波新書)本は、これから (岩波新書)
(2010/11/20)
池澤 夏樹

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 池澤夏樹編『本は、これから』(岩波新書/861円)読了。
 作家、学者など37人の読書家たちが、本の「これから」についての思いを綴ったオムニバス形式のエッセイ集。

 当然、電子書籍をめぐるあれこれが主要テーマとなるのだが、それにしては寄稿者の中に“電子書籍寄りの文化人”(と、私が思っている人。電子書籍本の著者など)がごく少ない。わずかに、荻野正昭など2、3人がいるのみ。
 佐々木俊尚、西田宗千佳、津野海太郎、山根一眞、橋本大也、歌田明弘、津田大介あたりは登場してもよさそうなものだが、出てこない。そのかわりといおうか、ベテラン書店員や書店経営者などが何人も登場する。そして、寄稿者の平均年齢がやたらと高めで、還暦過ぎた人が目立つ。
 こうした人選に、本書の立ち位置が如実に示されている。岩波の本だから当然といえば当然だが、紙の本寄り、「電子書籍懐疑派」寄りの内容なのだ(むろん、37人の中には例外もある)。

 それはべつにいいのだが、本書の37編はかなり玉石混淆、それも「石」が大半で、あまり得るところのない本だった。電子書籍懐疑派の言い分には、“愛書家のたんなる感傷”としか思えないものも多いし……。

 池澤夏樹・編となっているが、それは書き手の人選からかかわったのか、それとも「名前を貸しただけ」(出版界にはよくあること)なのか? 企画段階からかかわったのだとしたら、「池澤の編著にしては質の低い本だなあ」という印象だ。

 私にとって目からウロコの卓見があったり、感銘を覚えたりした原稿は、6編のみ。寄稿者の名前でいうと、内田樹、桂川潤、出久根達郎、土屋俊、常世田良、松岡正剛の各氏のものがよかった。
 それ以外のエッセイには、箸にも棒にもかからないものが少なくない。まあ、37編中の6編に読む価値があれば、打率としては悪くないか。

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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