萩原健一『日本映画[監督・俳優]論』


日本映画[監督・俳優]論 ~黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔~ (ワニブックスPLUS新書)日本映画[監督・俳優]論 ~黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔~ (ワニブックスPLUS新書)
(2010/10/08)
萩原 健一、絓 秀実 他

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 萩原健一・絓(すが)秀実著『日本映画[監督・俳優]論――黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔』 (ワニブックスPLUS新書/798円)読了。

 ショーケン――萩原健一が、おもに映画とテレビドラマの仕事で接した監督・俳優・脚本家・プロデューサーたちについて、縦横に語り尽くしたインタビュー集。インタビュアーはなぜか映画関係者ではなく、文芸評論家の絓秀実がつとめている。

 副題にもなっているとおり、黒澤明と神代辰巳についてかなり紙数を割いて語られている。とくに、黒澤については面白いエピソードが多い。神代と萩原の深いかかわりは知っていたが、黒澤作品への出演は『影武者』のみだから、萩原の口からこれほど黒澤について語られるとは意外であった。

 ほかの監督・俳優たちについても、『股旅』で一緒に仕事をした市川崑について「俺、大嫌い、市川崑」と言うなど、歯に衣着せぬ人物評、ぶっちゃけ話の数々が面白い。

 萩原が表現者として生きてきた過去40年間の音楽・映画・テレビ界の舞台裏を垣間見ることができるし、何より、役者としての長い実践をふまえた映画論・演技論・表現論として味わい深い。
 正直、私は萩原がこんなに深く考えて演技をしているとは思わなかった。「感性の人」ではあっても「知性の人」だとは思っていなかったのである。

 いい言葉もたくさん引き出している。たとえば――。

 僕の信念は、与えられたものは奪われる、だから自ら勝ち取らねばならないわけですよ。



 ものを作るというのは、どこかでリミッター、制限の回路を超えることだと思うんです。お酒も並々と注いでいって、あっ零れるという時にみんながハッと見るわけでしょ。腹八分目で物事をやっている人間ってどうなんでしょうかね。まぁ毎回そういうリミッターを超えることをやれというのではないけれど。毎回出来れば最高ですけどね。



 映画は本身の刀を抜いたうえでの御前試合だと思うんですよ。だけどテレビというのは木刀ですね。木刀で試合をする。しかし、木刀でも命を落としますからね。そういった真剣勝負を、テレビで重ねたからこそ僕は映画というものがやれたんじゃないですかね。僕は、テレビから基本的なソースをいただきました。



 (『いつかギラギラする日』のときの荻野目慶子について)彼女は、撮影の間、不眠症みたいだった。そりゃ寝られないから、おかしくなるよ。眠らないでやっているということは、撮る側からしたら面白いんですよ。リミッターを切ってるから。でも、そういう下品なことをしないで、素の状態でリミッターを切るのが本当の「美」というものなんですよ。



 巻末には絓秀実が長文の「解説」を寄せている。それはおもに中上健次と萩原を比較して論じたもので、わかったようなわからないような、読者を煙に巻く文章である。
 本文のインタビューでも、絓は冒頭で「生い立ちなども含めて、中上さんと萩原さんは非常に似ている」(え~、そうかあ?)と言い、中上の話から始めている。そのへん、私には、絓が自分の専門分野に引き寄せようとしてのこじつけとしか思えなかった。
 
 絓は萩原のこれまでの活動についてよく調べてインタビューに臨んでおり、その点好感は持てるのだが、やはり映画評論家にインタビューさせたほうがよかった気もする。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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