渡部昇一『知的余生の方法』


知的余生の方法 (新潮新書)知的余生の方法 (新潮新書)
(2010/11)
渡部 昇一

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 水曜日は赤坂の「シナリオ会館」で、映画監督の新藤兼人さんを取材。新藤さんは美しいお孫さん・新藤風さん(彼女も映画監督)に付き添われてのご登場。現在98歳だが、お元気である。

 で、木曜から今日までは取材で秋田県へ――。三泊四日の長い地方取材は久々だ。
 おりしも秋田は「5年ぶりの大雪」に見舞われていて、どこへ行っても一面雪景色であった。空港までのリムジンバスなんて、前が真っ白でほとんど何も見えず、乗っているこちらがヒヤヒヤしたほど。



 行き帰りの飛行機や電車で何冊か本を読んだので、1冊ずつ感想をアップしよう。
 まず、渡部昇一の『知的余生の方法』(新潮新書/756円)の感想から。

 タイトルが示すとおり、35年前のミリオンセラー『知的生活の方法』の“余生版”だ。つまり、すでに傘寿を超えた渡部が、定年後・老後に知的生活を満喫するための心構えを説いたもの。

 「『知的生活の方法』を愛読していた」などと言ったら知的な印象を与えないだろうし(笑)、世のインテリ方からは馬鹿にされそうだ。呉智英が最初期の著作で、『知的生活の方法』を「チホー」と略しておちょくっていたのを思い出す。

 が、じつは私は少年時代に『知的生活の方法』を読んで、けっこう影響も受けたのだ。頼山陽が「汝草木と同じく朽ちんと欲するか」と書いた紙を机の前に貼って勉学に励んだ、という話を同書で読んで、真似して勉強机の前に貼ったりした。
 渡部昇一の思想的偏りはさておき、『知的生活の方法』は呉智英が言うほど悪書ではないと思う。

 ただ、本書には、昔『知的生活の方法』を読んだときに受けたような感銘はまったくなかった。私が読むには早すぎるということもあろうが、その点を差し引いても、かなり中身の薄い本だという印象。

 そもそも、著者が読者として想定しているのは勝ち組シニア層であるらしく、下々の者には別世界って感じの話がたくさん出てくる。
 たとえば、“「余生を田舎で優雅に暮らそう」と考える人は多いが、都会で不自由なく暮らしているなら、いまの住まいをもっと快適にリフォームすることを考えたほうがよい”と、著者は言う。だが、家一つ持てずにカツカツの年金生活をするしかない層の「知的余生」については、はなから眼中にないのである。

 第一章の「年齢を重ねて学ぶことについて」だけは、生涯学びつづけることの尊さを熱く説いて、一読の価値がある。しかしあとの章は、ありふれたアドバイスが多かったり、著者の思想的偏りがモロに出ていたりして、いただけない。たとえば――。

 韓国のベストセラーには、日本人から見ると荒唐無稽の噴飯物が多いが、少なくとも韓国人が日本に深い怨念を持ち、日本を軍事占領したいという欲求をもっているくらいのことはわかる。



 この手の記述に反発を感じ始めると、あとはもうまともに読む気が失せてしまう本。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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