新藤兼人『生きているかぎり』/『一枚のハガキ』


生きているかぎり―私の履歴書生きているかぎり―私の履歴書
(2008/05)
新藤 兼人

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 新藤兼人著『生きているかぎり――私の履歴書』(日本経済新聞出版社/1785円)読了。

 日本最高齢の映画監督(今年の誕生日で99歳!)が、『日本経済新聞』の看板連載「私の履歴書」の一編として書いたものの単行本化である。来週新藤監督を取材する予定なので、その準備として読んだ。

 また、今夏に一般公開予定の新藤監督の最新作(にして、「最後の作品」であると監督自身が明言している)『一枚のハガキ』を、サンプルDVDをお借りして観た。

 『一枚のハガキ』は、監督自らの海軍二等兵時代の忘れ得ぬ記憶を元にした、ある種の反戦映画である。ゆえに、『生きているかぎり』を読んでから観ると感動が倍加する。大竹しのぶが演ずるヒロイン――戦争に翻弄されながらもたくましく生き抜く農婦――には監督の母上の姿が投影されているのだろうし、主人公の復員兵(豊川悦司)には若き日の監督自身が投影されている。

 大竹しのぶの演技がすごい。彼女が名優であるのはいまに始まったことではないが、改めてすごいと感じた。今年の賞レースで主演女優賞を総ナメしても不思議ではない熱演である。

 反戦映画のヒロインといえばとかく聖女のごときイメージで描かれがちだが、本作で大竹が演じる農婦は違う。生々しくも「女」であり、ドロドロした情念も持っている。あくまで生身の人間として描かれている。だからこそ、彼女の戦争への怒り、戦死した夫への思慕が、いっそう観る者の胸に迫るのだ。

 『生きているかぎり』は、印象的なエピソード満載でバツグンの面白さだった。新藤監督の歩みをフィルターとした日本映画史としても出色だし、故・乙羽信子との愛情など、ラブストーリーとしても感動的。『ゲゲゲの女房』がヒットしたことだし、朝の連続テレビ小説にしてもよいのではないかと思った。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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