米田綱路『モスクワの孤独』


モスクワの孤独―「雪どけ」からプーチン時代のインテリゲンツィアモスクワの孤独―「雪どけ」からプーチン時代のインテリゲンツィア
(2010/02)
米田 綱路

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 西村賢太の芥川賞受賞は、最近珍しい痛快事であった。これまでの彼の全著作を読んでいる私も、まさか芥川賞をとれるとは思っていなかった。ファンであればあるほど――つまり西村の作風をよく知っている者ほど、「ま、無理だろうな」と見ていたのではないか。

 西村の受賞会見はサイコーだった。なにしろ、

――きょう受賞が決まった瞬間は、誰とどこにいましたか。

 自宅で。そろそろ風俗行こうかなって(笑)。行かなくてよかったです。



 である。芥川賞をとったからといって、急に「いい子ちゃん」になったりしないのだ。

――西村さんが読者に届けられることは。

 ま、なんにもないと思いますけどね(笑)。読んでくださった方が、自分よりもだめな人がいるんだなと思ってもらえたら、まあおこがましいけど、ちょっとでも救われた思いになってくれたら、うれしいですね、書いた甲斐があるというか。それで僕が社会にいる資格があるのかなと、首の皮一枚、細い糸一本で社会とつながっていられるかな、と本当に思いますね。



 ……というくだりも、じつに彼らしてくよい。名言ですらある。

 今回の受賞とその後にくり広げられるであろう狂騒曲から、少なく見積もっても10作は短編が書けるはず。早く読みたいものだ。
 同時受賞の朝吹真理子に一目惚れした西村が、「格差」をものともせず彼女にアタックし、あっさりフラれる(大いにありそう)話とかが受賞第1作になったりしたら、もうサイコーである(笑)。



 米田綱路(こうじ)著『モスクワの孤独――「雪どけ」からプーチン時代のインテリゲンツィア』(現代書館/4200円)読了。

 2段組で600ページ近い大著。ポスト・スターリン時代からプーチン時代までのソ連―ロシアの歴史の中で、権力に抗い自由を希求した5人のインテリゲンツィアの軌跡をたどったもの。書評を書くのでここではくわしく紹介できないが、文学的香気に満ちた名文で端正に綴られた力作である。
 ハイブラウな内容ながら、学術論文的な無味乾燥の対極にある本で、まるで小説のように味わい深い。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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