平山夢明『ダイナー』


ダイナーダイナー
(2009/10/23)
平山 夢明

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 平山夢明著『ダイナー』(ポプラ社/1575円)読了。

 忙しいのに、パラパラっと読み始めたら止まらなくなって、最後まで一気読みしてしまった。
 この人の小説を読むのはこれが初めて。「ホラー小説の人」だという認識をしていたのだが、本作はホラーではなくノワールだ。それも、馳星周の諸作などとはまったく異質な、斬新このうえないノワール。第28回日本冒険小説協会大賞受賞作でもある。

 人生に疲れたOLの主人公・オオバカナコが、ふと魔が差して手を出した、携帯闇サイトで探した危ないバイト。その失敗から犯罪組織に拉致られ、プロの殺し屋専門の会員制ダイナーでウェイトレスとして働かされる羽目になる。怪物のような殺し屋たちばかりが客としてやってくるその店では、ささいなことでウェイトレスは命を落とし、長続きしない。

 だが、冴えない普通の女だったカナコは、毎日が修羅場のそのダイナーで働くうち、少しずつたくましさを増していく。
 次から次へと事件が起こり、日替わりのように客が死ぬ恐怖のダイナーで、カナコは生き残って娑婆に戻ることができるのか……。

 ……と、いうような話。思いっきり荒唐無稽な設定ではあるが、テンポのよい展開とキャラの立たせ方のうまさでグイグイ読者を引っぱり、リアリティのなさが少しも気にならない。
 ダイナーの店長で自らも元殺し屋である副主人公・ボンベロが魅力的だし、店にやってくる殺し屋たちは全員キャラが立っている。

 たとえば、美貌の女殺し屋・炎眉(えんび)。彼女はカナコに、「あなた、生きたまま自分の腸で首を絞められるのがどんなに辛いかわかる?」などとゾッとすることを言ったりする。そして、彼女の爪には「ダマスカス鋼をベースにした合金で作られた極薄の剃刀が仕込まれて」おり、ピアスには「合金製のワイヤーソーが仕込まれている」。

 意外なことにエロ要素は皆無に等しい作品だが、そのかわり、グロ要素とバイオレンスはてんこ盛り。スタイルはノワールだが、キャラの立ちかげんと暴力シーンのアイデアの豊富さは、むしろ山田風太郎の忍法帖シリーズを彷彿とさせる。

 セリフも魅力的だ。どぎついカッコよさ満点の名セリフが、随所にちりばめられている。たとえば――。

「せいぜい気をつけることだ。今日も客がやってくる。客のなかには気に入らなくておまえを殺そうとする奴もいれば、気に入ったから殺そうとする奴もいるだろう」



「死体に重りをつけて捨てるのは素人だ。プロは魚が通れる程度の隙間のある金網に入れる。網なら潮の影響も受けにくいし、腐敗ガスが充満しても浮かび上がることもない。身は魚が綺麗に骨にしてくれるし、網が錆びて壊れる頃には骨も崩れて跡形もない」



 かなり読者を選ぶ作品だが、暴力描写に免疫がある人ならまちがいなく楽しめるノンストップ・エンタテインメントだ。グロ描写が多いわりに、読後感は意外にさわやかだし、感動もある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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