田中森一・夏原武『バブル』


バブル (宝島SUGOI文庫 A た 2-1)バブル (宝島SUGOI文庫 A た 2-1)
(2008/10/18)
田中 森一、夏原 武 他

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 水曜日は、腹話術師のいっこく堂さんを取材。都内某所の事務所兼ご自宅にて。

 腹話術を始めた年に1日8時間の練習を自らに課したとか、練習のしすぎで何度も舌から血を流したとか、すさまじい努力の日々を飄々と事もなげに語ってくださる姿が印象的だった。

 以前は物真似で生計を立てていた時期もあるそうで、インタビューの中に出てくるほかの人の話をすべて物真似の形で語って下さった(これがまた、超うまい)。いろんな意味で楽しい取材だった。

 で、取材を終えてから、八王子の創価大学へ。全学読書サークル「SBW」に招かれて、「私の読書術」というテーマで話をする。
 エラソーに講釈をたれるような立場ではないのだが、おかげで、読書についての自分の考えをまとめるよい機会になった。

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 行き帰りの電車の中で、田中森一(もりかず)・夏原武著『バブル』(宝島SUGOI文庫/520円)を読了。ライターの夏原が聞き手になってのインタビュー形式(実質的には対談)なので、サラッと読める本。

 特捜検事から「ヤメ検」弁護士となり、バブル期に暴力団幹部や仕手筋など、裏社会の人間たちと密接なつながりをもった田中は、「闇社会の守護神」とも称された。
 その後、許永中とともに石橋産業事件で逮捕され、現在も服役中である。

■関連エントリ→ 森功『許永中 日本の闇を背負い続けた男』レビュー

 本書は、収監前の田中へのインタビューをまとめたもの。おもにバブル期のすさまじい日々を振り返った内容となっており、田中のベストセラー『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』のスピンオフ本といった趣。
 夏原は劇画『クロサギ』の原作者でもあるが、バブル期にヤクザをしていた人でもあるので、本書に最適のインタビュアーといえよう。

 まあ、田中のような人をあまりダーティ・ヒーローとしてもてはやすのもどうかと思うが、内容はメチャメチャ面白い。仰天エピソードの連打である。
 たとえば、田中による「まえがき」にはこんな一節がある。

 ちょっと契約に立ち会っただけで何千万円の報酬をもらったり、顧問料だけで年間億単位のお金が転がり込んでくると、おかしくなるなというほうが無理である。カネに対する感覚がどんどん変わっていき、当時は一万円を一○○円くらいの感覚で使っていたと思う。
 もちろん、私の周囲にいたバブル紳士たちは、もっとすごかった。許永中や「五えんやグループ」の中岡信栄たちは、一○億円を「一本」と数えていたし、ある人物が選挙資金の支援を頼むのに「五本指」を示したら、五億円もらってしまい、頼んだほうは「五○○○万円のつもりだった」という話もある。



 もう一つ、本文中の印象的な田中の発言を引く。

 バブル当時は、担保不足であったとしても、土地の値段が翌日には倍になったりするわけだから。実際に手続きなんて後回しで、担保も付けずに、先にカネを貸すということがあったんだから。ノンバンクなんて、ほとんどそやろ。そういう意味では、手続き的には、みんなが背任みたいなことをやってたのよ。バブル当時の貸付けというのは、ほとんどが実質は背任だから。それでバブルが崩壊して、損害が大きいやつだけを刑事事件として摘発したという、それだけの話であってね。



 バブル期には、そんなふうに日本中が「狂っていた」のである。そして、その後遺症はいまも日本社会に根深く残っていると思う。
 ことの善悪はさておき、「バブルとはいかなる時代だったのか?」を知るために、一読の価値はある本。

 ちなみに私自身は、バブル期というと駆け出しライターだった時期で、むしろ人生でいちばんビンボーだったころである(笑)。そのため、「バブルの恩恵なんてまったく受けなかった」とずっと思っていたのだが、最近考えが変わった。
 あのころ、駆け出しで未熟なライターだった私にさえ仕事がどんどん入ってきたのは、出版界全体がバブル景気で余力があったからにほかならないのだ。その意味で、私もまた「バブルの恩恵」でライターになれたのだと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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