梅棹忠夫・小山修三『梅棹忠夫語る』


梅棹忠夫 語る (日経プレミアシリーズ)梅棹忠夫 語る (日経プレミアシリーズ)
(2010/09/16)
小山 修三

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 梅棹(うめさお)忠夫・小山修三著『梅棹忠夫語る』(日経プレミアシリーズ/893円)読了。

 今年の夏に90歳で大往生した「知の巨人」梅棹が、その最晩年に自らの来し方を振り返って語った談話集。
 語り下ろしの自伝(ただしダイジェスト版)としても読めるし、風変わりな「梅棹忠夫入門」としても読める。
 カバーの惹句や聞き手の小山修三による「あとがき」には「若い世代へのメッセージ」うんぬんという言葉があるが、そういう感じはあまりしない。

 梅棹の著作というと、私は『知的生産の技術』と『文明の生態史観』しか読んだことがない。なのに「影響を受けた」などと言ったら怒られそうだが、それでも、私は『知的生産の技術』にかなり影響されたという自覚がある。
 私にかぎったことではなく、現在の「知的生産の技術」に梅棹が与えた潜在的影響は甚大・広範なものであるはずだ。たとえば、山根一眞の『スーパー書斎の仕事術』も、野口悠紀雄の『「超」整理法』も、梅棹という先駆者がいなかったら生まれ得なかったはずだ。

 梅棹は、1986年に突然失明するという悲劇に見舞われた人である。そのためであろう、彼はパソコンやインターネットの世界にほとんど触れることなく世を去った。本書にも、「ITは信用しない。自分がやっていないから」という項目がある。
 これは、非常に惜しいことだ。梅棹がITの世界を知ったなら、先駆者ならではの慧眼で、その本質を見事に論じたに違いないのだ。

 ただし本書は、「知的生産の技術」の先駆者としての梅棹よりも、型破りな学者としての梅棹のほうが前面に出ている本だ。関西弁の小気味よいリズムに乗って、日本のアカデミズムの「ここが変だよ」という点をズバズバとついていくところが痛快である。たとえば――。

 どこかでだれかが書いていたんだけど、「梅棹忠夫の言ってることは、単なる思いつきにすぎない」って。それはわたしに言わせたら「思いつきこそ独創や。思いつきがないものは、要するに本の引用、ひとのまねということやないか」ということ。それを思いつきにすぎないとは、何事か。
(中略)
 学問とは、ひとの本を読んで引用することだと思っている人が多い。
 それで、これは昔の京大の教授だけど、講義のなかで、わたしを直接名指しで、「あいつらは足で学問しよる。学問は頭でするもんや」って言った人がいた。頭でするもんやということは、ひとの本を読めということやな。「あいつらは誰も引用していない。こんなのはだめだ」と。そういう言い方を講義のときにしたという話を聞いたことがある。



 その他、「博士号は足の裏についた飯粒や。取らな気持ち悪いし、取っても食えん」などというユーモアに満ちた名言も多く、楽しい。インタビューというより対談に近いスタイルなので、あっという間に読める。それでいて、深みもある本だ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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