サンタナ『ギター・ヘヴン』


ギター・へヴンギター・へヴン
(2010/09/22)
サンタナ

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 ここ1、2ヶ月でいちばんよく聴いたCDが、じつはこれだったりする。
 ディスク・レビューを書くためにサンプル盤をいただいた、『ギター・ヘヴン~グレイテスト・ロック・クラシックス』(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)。サンタナが、ロック史に残る有名曲ばかりを取り上げたカヴァー・アルバムである。

 ギターをもってのけぞっているジャケが、「ダッセ~」という感じ。おなじみのロゴがなければ、サンタナのアルバムとはとても思えない。横尾忠則を起用したりして、一貫してジャケにこだわってきたサンタナらしからぬダサさだ。

 だが、ジャケであなどってはいけない。中身はゴージャスである。 
 特筆すべきは、曲ごとに変わるゲスト・ヴォーカリストの顔ぶれが豪華なこと。スコット・ウェイランドやチェスター・ベニントンなど、現役バリバリの人気ロック・バンドのヴォーカリストからジョー・コッカーのような超ベテランまで、一流どころがずらりと揃い、喉を競っているのだ。
 名ヴォーカリスト、ポール・ロジャースが曲ごとにギタリストを替えて作った『マディ・ウォーター・ブルーズ』という傑作カヴァー・アルバムがあったが、あれの逆ヴァージョンという趣。

 ヴォーカルにかぎらず、ゲスト・ミュージシャンも豪華だ。
 ビートルズの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」なんて、ヴォーカルがインディア・アリーなうえにヨー・ヨー・マのチェロまで加わっている。ドアーズの「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」なんて、オルガンはレイ・マンザレク(つまり、本物の元ドアーズ)である。しかも、ドラムスは全編デニス・チェンバースだったりする。

 選曲は、王道路線。ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」、レッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」、クリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」などの超定番を中心に、ギター・リフに魅力の核がある曲ばかりが選ばれている。
 その中で、カルロス・サンタナは持ち前のエモーショナルなプレイを存分に披露。まさに「ギター天国」の名にふさわしい一枚といえる。

 まあ、正直なところ、「なぜサンタナがこの曲をやるのか?」という必然性がまったく見えない曲もある。デフ・レパードの「フォトグラフ」なんて、予備知識なしに聴いたらサンタナがやっていると思う人は誰もいないだろう(サンタナらしくないというだけで、カヴァーとしての出来はよい。元曲よりカッコイイくらい)。
 『キャラバンサライ』などの過去の名作にあった深い精神性はここにはなく、本作でのカルロスはひたすらロック・エンタテインメントに徹している感じだ。

 しかし、無節操に弾きまくっている感はあっても、サンタナらしさが光る部分は随所にある。
 たとえば、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」などで聴かせる「泣きのギター」はサンタナの真骨頂だし、ローリング・ストーンズの「キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」の間奏で突如濃厚になるラテン・テイストはさすがという感じだ。

 原曲に比較的忠実なアレンジのものが多いが、AC/DCのハード・ロック・クラシック「バック・イン・ブラック」をヒップホップのナズとのコラボで取り上げるなど、意表をつくアレンジのものもある。多彩な内容ながら、カルロスのギターが全体に統一感を与えている。

 ロック黄金期の名曲の数々を21世紀に蘇らせた本作は、中高年ロック・ファンには懐かしく楽しめるし、ロックを聴き始めたばかりの若者たちにとっては最高のロック入門となるだろう。
 「求道者」としてのカルロス・サンタナを求める古いファンは顔をしかめるかもしれないが、エンタテインメントとしては上出来のアルバムだ。世界各国で大ヒット中らしいが、それもうなずける。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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