荻原魚雷『活字と自活』


活字と自活活字と自活
(2010/07/13)
荻原魚雷

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 荻原魚雷著『活字と自活』(本の雑誌社/1680円)読了。

 前著にあたる『古本暮らし』がよかったので、著者の単著第2弾を読んでみた。

 ■関連エントリ→ 『古本暮らし』レビュー

 内容はおおむね前著の延長線上にある。著者の地元である高円寺の香り、ひいては中央線の香りムンムンの、古本とフリー物書き業をめぐるエッセイ集である。

 「あとがき」によれば、「雑誌みたいな本にしたい」というのが著者たち(著者・編集者・デザイナー)の共通の願いだったという。その願いどおり、写真も随所に盛り込まれ、いい意味で雑然とした作りになっている。高円寺あたりの古本屋がそっくり部屋の中に入ったかのような、著者の自宅の本棚の写真もいくつかある。

 文章といい、内容といい、終始一貫しょぼくれていて貧乏臭いのだが、そのしょぼくれた味わいが、読んでいてむしろ心地よい。

 『活字と自活』という書名のとおり、物を書いて自活していくことのたいへんさと楽しさを綴った文章も多い。とくに、著者自身の駆け出しライター時代を振り返った一連の文章は、たいへん身につまされた。身につまされすぎて、まるで昔の自分を見るような気分になった。
 たとえば、こんな一節――。

 無署名の原稿をいくら書いても次の仕事につながらない。つながることもあるのかもしれないが、わたしはつながらなかった。
 無名の書き手の場合、何人もの人に断られてから、ようやく原稿の依頼がくることが多い。そうした仕事は、連休前、お盆、正月あたりに集中する。「明日までにおねがいします」といわれて、明日までに書く。「助かりました」といわれるが、それっきりである。何の準備もなく、何の取材もせず、短時間で書いた原稿だから、出来はよくない。二日ほど徹夜で書いた原稿を渡したあと、原稿料を値切られたこともあった。



 プロ野球でいえば、全国のエースで四番だったような人たちのよりすぐりが、プロになるわけだが、自分をふくめたフリーライター仲間を見ていると、社会人の予選があれば、コールド負けするような連中ばっかりだった。朝起きれんわ、挨拶はできんわ、時間を守れんわ……以下略。



 著者のお気に入り本をめぐるエッセイも多いのだが、そのセレクトにも著者のこだわりが感じられる。ことさらにマイナー志向というわけではなく、古書で高値がつくような本ばかりを取り上げているわけでもないのだが、世間のメインストリームからは微妙にずれているのだ。

 「よーし、読むぞ!」と身構えて読むような本ではなく、ふとした時間のすき間に本棚から引っぱり出して何ページか拾い読みする。そして、いつの間にか読み終えている……そんな読み方がふさわしい本。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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