藤原洋『第4の産業革命』


第4の産業革命第4の産業革命
(2010/07/07)
藤原 洋

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 藤原洋著『第4の産業革命』(朝日新聞出版/1470円)読了。

 工学博士で、日本のデジタル情報革命を推進してきた立役者の1人でもある著者が、来たるべき「環境エネルギー革命」を概説した本。
 
 「環境エネルギー革命」とは、太陽エネルギーと電気自動車、そして送配電の革新技術である「高温直流超伝導送信」を「三種の神器」とした環境エネルギー産業の勃興を指す。
 環境エネルギーが社会の中心となる時代が到来すれば、化石燃料依存型の社会は終わり、資源問題と環境問題の劇的な解決につながる。それは、たしかに「産業革命」と呼ぶにふさわしい。

 そして、イギリスで起こった動力革命を「第1次産業革命」、ドイツとアメリカで起こった重化学工業革命を「第2次産業革命」、アメリカで起こったデジタル情報革命(IT革命)を「第3次産業革命」ととらえれば、「環境エネルギー革命」は「第4の産業革命」ということになる。

 本書は、環境エネルギー革命の概説書としてたいへん優れている。正味200ページほどのコンパクトな本で、文章にも論文臭はなくわかりやすい。

 著者は、まず過去の3つの産業革命の意味についても手際よくまとめる。
 そして、環境エネルギー革命の重要な要素である太陽エネルギー・電気自動車・スマートグリッド(次世代送電網)などについて、その基本的仕組みと歴史・現状・展望を、私のような理系オンチにもわかるよう、噛んで含めるように解説してくれている。

 太陽光発電の仕組み、電気自動車の歴史、超伝導とは何か……などという初歩の初歩から説き起こし、そこから最新知識にまで読者を導いていくのだから、著者の教え上手は池上彰も真っ青である。
 環境エネルギーをめぐるAtoZが概観でき、世界がいま進んでいる方向性がよくわかって、頭の中がスッキリ整理される感覚を味わうことができる。4つの産業革命という串によって近・現代史がつらぬかれることで、いまという時代がどのような時代なのかが、よくわかるのだ。たとえば、次のような記述――。

 「レクサス」のリコール問題は、複雑な要因が複合して起こったものと考えられますが、トヨタ自動車という企業の問題というよりも、歴史的に俯瞰してみれば、内燃機関を利用した自動車エンジンの限界であったと受け止めることができるかもしれません。世界に冠たる徹底的な品質管理をして安全に気を配っていた企業でも不具合が出た事実は、産業史のターニングポイントを示しているともとれるのです。
 さらに、後で詳述するように、デジタル情報革命の進展は、エネルギーの大量消費を招いています。将来、ITサービス企業のデータセンターが、世界のエネルギー需要の半分を占めるといった予測もあります。これらの事実を見ても、歴史的必然として、「環境エネルギー革命」という第4の波に乗る時期が訪れていることがわかります。



 「2000年までは、欧州全体より、日本一国での太陽光発電量が多かった」とか、私のようなシロウトには目からウロコの記述も満載。

 何より素晴らしいのは、未来に明るい希望を抱かせる本であること。たとえば――。

 20××年、深夜の東京。街は煌々と光に照らされています。その光の源は、サハラ砂漠、ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠をはじめ、巨大な砂漠に降り注ぐ太陽エネルギー。その電力が東京まで運ばれ、それによって東京は不夜城のように輝いているのです。太陽エネルギーは無尽蔵ですから、節電を考える必要もありません。
 ――これはけっして夢物語ではなく、そう遠くない将来に実現するエネルギー供給の姿でしょう。



 そして本書は、“日本はその高い技術力を活かし、第4の産業革命をリードすべきだ。そこにこそ、我が国が現在の停滞を打ち破る鍵もある”と訴える熱い提言の書でもある。政治家たちにこそぜひ読ませたい一書だ。

■関連エントリ
清水浩『脱「ひとり勝ち」文明論』レビュー
矢部孝・山路達也『マグネシウム文明論』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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