シーウィンド『REUNION』


REUNIONREUNION
(2009/04/22)
シーウィンド

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 シーウィンドの『REUNION』を聴いた。
 シーウィンドは、1970年代に一世を風靡したハワイのフュージョン・グループ。
 フュージョンといっても、キュートでパワフルな女性ヴォーカリスト、ポーリン・ウィルソンを軸とした編成で、ヴォーカル・チューンが主体だった。ゆえに「フュージョンAOR」などと呼ばれたものだ。

 これは、1980年発表のラスト・アルバム『海鳥』以来、じつに29年ぶりの再結成アルバム(タイトルが『REUNION』て、なんのヒネリもないなあ)。

 私は、毒にも薬にもならないイージー・リスニング的なフュージョンも、甘ったるいだけのAORも好きではない。が、シーウィンドの音楽は、フュージョンとAORの境界に位置しながらも、ファンキーかつテクニカルでおよそイージー・リスニング的ではないし、甘ったるさもない。両者のいいとこ取りという感じで、ポップなのに深みがあってよかったのだ。

 29年ぶりの本作も、シーウィンドの美点がいかんなく発揮された快作となっている。
 ポーリン・ウィルソンの歌声は、相変わらず高音が伸びやかで、少しも衰えていない(さすがに若いころの、声から生命力がはじけるような激しさはないが)。
 また、グループの活動休止後も一貫して売れっ子ミュージシャンだったメンバーによる演奏も、さらに円熟味を増している。

 内容は、かつての人気曲のセルフ・カヴァーが5曲に、新曲が7曲。そして、新曲のうち4曲がインスト・ナンバーになっている。
 新曲にインスト曲のほうが多いことが象徴するように、かつてのシーウィンドよりはAOR色が薄れ、フュージョン寄り、ジャズ寄りのアルバム。

 4曲のインスト曲が、いずれもたいへん素晴らしい仕上がり。
 ホーン・セクションやリズム隊はクルセイダーズばりにファンキーで、パワフル。それでいて、夏の浜辺の夕暮れのようなリリシズムが全編に満ちている。
 力強さと、心鷲づかみの切なさ――2つの魅力を両立させる離れ業は、シーウィンドならではだと思う。
 かつてのシーウィンドのファンの期待に、十二分に応えた力作である。

 5曲のセルフ・カヴァーにも、それぞれ原曲とは違った魅力が加味されている。たとえば、オープニングの「ヒー・ラヴズ・ユー」では、原曲のフリューゲル・ホーンがゲストのアル・ジャロウのスキャットに置き換えられている。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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