小田光雄『出版状況クロニクルⅡ』


出版状況クロニクル〈2〉2009年4月‐2010年3月出版状況クロニクル〈2〉2009年4月‐2010年3月
(2010/07)
小田 光雄

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 小田光雄著『出版状況クロニクルⅡ――2009.4~2010.3』(論創社/2100円)読了。

 版元・論創社のウェブサイトに連載されていた「出版状況クロニクル」(現在は著者の個人ブログで継続中)の、昨春から今春にかけての一年分をまとめたもの。

 私はサイトでの連載をそのつど読んでいたが、こうやって一冊にまとまった形で読むと、サイトで読んだときよりもずっと面白く感じる。まとめて読むからそう思うのか、それとも単行本化にあたっての加筆修正が大幅になされているのか。

 もっとも、本書について「面白い」と言うのは、出版界の片隅に身を置く者としては不謹慎かもしれない。本書は、出版界が直面する崩壊の危機のリポートだからである。
 その危機を、著者は「出版敗戦」という言葉で表現する。日本が65年前の敗戦で焦土と化したように、出版界はいままさに焼け野原となりつつある、というわけだ。

 出版界の折々のニュースをピックアップし、短い論評をくわえていくスタイルの当クロニクルだが、本書に収められた時期の出版界には、どちらを向いても暗いニュースしかない。出版社の倒産、雑誌の休刊、大手出版社や新聞社の赤字、売り上げや広告収入の激減などなど……。
 
 そうしたニュースは個別には耳にしていたものの、本書のように一つにまとまった形で読むと、改めてその深刻さに驚かされる。
 著者はとくに、雑誌業界全体の落ち込みを深刻にとらえている。

 日本の近代出版流通システムは雑誌をベースにして構築されたものであるから、雑誌の誕生から始まり、雑誌の衰退によって終わるという局面へと入っている。



 もはや誰にも止められない、「戦後の再版委託制による出版流通システムの崩壊」。だが、崩壊後にどのような「出版流通システム」があり得るのかは、まだ曖昧模糊としている。

 著者も本書で皮肉っているが、出版界では「新聞・テレビの崩壊」が取り沙汰されることはあっても、当の出版界の崩壊危機が雑誌で特集されたり、新書のテーマになったりすることはない(テレビ局の経営危機を特集したテレビ番組がないのと同じことだが)。

 だからこそ、真正面から「出版敗戦」の現実と向き合った本書には、資料的価値も含め高い価値がある。

 なお、大胆な仮説として面白いのは、後半の第二部で、「ブックオフ」と「TSUTAYA」の勃興をやや陰謀論的な視点から読み解いている点。
 

 出版業界をそのまま放置しておけば、アメリカ資本で、しかも(日本には)税金も納めていないアマゾンに日本の出版業界が完全に占領されてしまうのは目に見えているので、何らかのプランが経産省周辺から出されている可能性は否定できないでしょう。



 そして、出版界再編を早急に推し進めるための尖兵として、「ブックオフ」と「TSUTAYA」が選ばれ、巨大な力によって後押しされている、と見るのだ。当否はともかく、興味深い仮説ではある。

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コメント

Re: 楽しませてもらっています
ハザウェイさま

あたたかいコメントありがとうございます。
ちなみに、本書にも都市出版のことが少しだけ出てきますよ。

  • 2010-09-07│17:43 |
  • 前原  URL│
  • [edit]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2010-09-06│00:43 |
  • [edit]
Re: No title
> 新聞拝見しました!
> すばらしいです~

里奈子様

ありがとうございます。
先生に見ていただけたら、と思います。
  • 2010-09-05│16:41 |
  • 前原  URL│
  • [edit]
No title
新聞拝見しました!
すばらしいです~

これからもブログ楽しみにしています
  • 2010-09-05│07:34 |
  • 里奈子 URL│
  • [edit]

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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