立川シネマシテイで『ソルト』を観た。
アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイ・アクション。
冷戦時代の遺物のようなスリーパー・エージェント(その土地の市民になりきって生活しているスパイ)の物語。映画の中では、ケネディ大統領暗殺犯のオズワルドもじつはソ連のスリーパー・エージェントだった、という話になっている。
訪米中のロシア大統領の暗殺計画とか、米大統領がロシアを核攻撃する決断を下して「すわ、第三次世界大戦勃発か」という展開とか、あれよあれよと話が大きくなっていく。ものすごく荒唐無稽。いまどき、『ゴルゴ13』だってもっとリアルな話にするぞ。
それに、二重スパイの嫌疑をかけられて逃亡するCIAエージェント、イブリン・ソルト(ジョリー)が、あまりにも強すぎ。屈強な男たちを次々になぎ倒し、ハイウェイを走るトラックの屋根から屋根へ飛び移ったりするすさまじい逃避行をくり広げる。「普通の人間なら5回は死んでるぞ」という感じ(笑)。
当初はトム・クルーズ主演で話が進んでいた映画なのだそうだ。そう言われると、なんとなく納得。アンジェリーナ・ジョリーでは、ヒロインの圧倒的強さが絵空事に見えてしまうのだ。
では、荒唐無稽すぎてつまらない映画かといえば、そうでもない。少なくとも、私には大いに楽しめた。細部にはリアリティがあって、大枠の荒唐無稽さをうまく中和しているから。
爆薬のスペシャリストでもあるという設定のソルトが、消火器その他を使って即席の爆弾を作って窮地を脱するなど、細かいエピソードには『MASTERキートン』を彷彿とさせるところもある。ヒロインのサバイバルの過程にはけっこうリアリティがあって、面白いのだ。
- 関連記事