Cocco『エメラルド』


エメラルド(初回限定盤)(DVD付)エメラルド(初回限定盤)(DVD付)
(2010/08/11)
Cocco

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 Coccoのニューアルバム『エメラルド』(スピードスター・レコーズ)を、サンプル盤でヘビロ中。

 前作『きらきら』以来3年ぶりの新作である。これまでのアルバムが根岸孝旨、長田進といったプロデューサーとの共同制作であったのに対し、今回はCocco自身がすべてプロデュースしている。

 『きらきら』はまったく好きになれなかった私だが、この新作はたいへん気に入った。
 私は、ファースト・アルバム『ブーゲンビリア』(1997)こそCoccoの最高傑作だと思っている。つまり、Coccoというアーティストは、最初にいきなり頂点を極めてしまったと認識しているのだ。
 その認識は本作を聴いても変わらないが、この新作には少し『ブーゲンビリア』のころに回帰した印象があって、そこが好ましい。
 ただし、『ブーゲンビリア』のころのような、自分を瀬戸際まで追いつめていくような切迫感はあまりない。もっと大らかな音だ。

 先行シングルにもなった「ニライカナイ」は、沖縄民謡の合いの手や「琉球國祭り太鼓」を巧みに織り込んだ、美しくパワフルなロック・チューン。



 この曲にかぎらず、Coccoは本作で、ウチナーンチュ(沖縄人)としての自らのルーツに、これまでになくストレートに向き合っている。沖縄民謡の単純な摸倣ではなく、そのエッセンスを抽出したうえで、誰にも真似の出来ないCoccoならではのロック/ポップに溶け込ませている。また、歌詞にも沖縄の方言が多数盛り込まれているし、沖縄に向ける真摯な思いが全編に熱くみなぎっている。

「ばあちゃん、ごめん。今、やさしい歌は歌えない」
 ――これは、Coccoが『沖縄タイムス』に連載中のエッセイ「こっこタイム。」の、今年5月4日付の回の一節。この言葉が象徴するように、本作は総じて力強い。

 とはいえ、ハードなロック・チューンばかりが並んでいるわけではない。
 根岸孝旨以外にもCurly Giraffe、RYUKYUDISKO、mine-changら複数のアレンジャーを迎えたことで、過去のどのアルバムよりも多彩なサウンド・アプローチがなされているのだ。

 もともと定評ある歌唱力にも、いっそう磨きがかかっている。スケールの大きなバラード「玻璃の花」など、聖性すら感じさせる歌声だ。「ディーヴァ」という呼び名は、いまのCoccoにこそふさわしい。



 昨年、雑誌『papyrus(パピルス)』の表紙を飾ったCoccoの痛々しい姿が話題になった。ガリガリに痩せた拒食症の身体、腕にはたくさんの自傷行為の跡……。
 だから、本作がこのように大らかでパワフルなものになったことに、多くのファンがホッとしたと思う。その「パワー」が危ういバランスの上に成り立っているとしても、とりあえず、Coccoはいまアーティストとして充実しているのだと思う。

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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