フジファブリック『 SINGLES 2004-2009』


SINGLES 2004-2009 【初回生産限定盤】SINGLES 2004-2009 【初回生産限定盤】
(2010/06/30)
フジファブリック

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 このところの愛聴盤は、フジファブリックのベストアルバム『SINGLES 2004-2009』(EMIミュージック・ジャパン/3200円)。サンプル盤をいただいたもの。

 フジファブリックのフロントマン、志村正彦は、昨年末、29歳の若さで急逝した。このアルバムは、フジファブがメジャーデビューしてから昨年までに発表した11枚のシングルA面曲(いまでもA面という言葉が残っているのだな)を、発表順に収録したもの。図らずも「夭折の天才」のリストに加えられてしまった志村の軌跡が刻み込まれている。

 改めて11曲を通して聴くと、いずれ劣らぬ名曲揃いであることに驚かされる。「Jロックの中原中也」と評する声もあったほど、志村の書く詞は文学性が高いし、純日本的な詩情とロックのダイナミズムを違和感なく融合させたそのサウンドは、すこぶる独創的でありながらポップで聴きやすい。

 どの曲もメロディーはキャッチーだが、細部には目利きを唸らせるひねりが幾重にも加えられている。
 「Sugar!!」のように元気いっぱいの曲もあるものの、いまの時点で強い印象を受けるのは、「陽炎」「茜色の夕日」「桜の季節」「若者のすべて」のような、一連のノスタルジックなナンバー。それらの曲に満ちた甘やかな喪失感は、志村正彦を喪ったファンの心情とぴたり重なり合って、いっそう胸をしめつけられるようだ。

 それにしても、いまになって思うのは、志村正彦はメジャー・デビュー・アルバム『フジファブリック』(2004)のころからすでに完成形だったということ。「陽炎」「桜の季節」「赤黄色の金木犀」という第一級の名曲が、いずれもデビュー・アルバムに入っていたのだから驚きだ。

 ニルヴァーナ、バッド・フィンガー、ジョイ・ディヴィジョンなど、中心者の急逝で終焉を迎えたバンドは多いが、フジファブは解散せず、残されたメンバーで活動を継続するという。あたかも、ジム・モリソンの死後も活動をつづけたドアーズのように……。

 今月末には(てゆーか、今日発売だ)、志村亡きあと初のニューアルバム『MUSIC』も発売される。その意味で、このシングル集はバンドの終止符ではなく、新たな出発に向けた大きなステップとなるものだ。

 シングル集というくくりだから、名曲「花屋の娘」は落ちてしまう。あの曲好きなんだよなあ……とか思ったら、初回限定盤についているオマケのDVDには「花屋の娘」のビデオ・クリップもしっかり入っていた。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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