たかぎなおこ『浮き草デイズ』


浮き草デイズ 1 (1)浮き草デイズ 1 (1)
(2008/05/16)
たかぎ なおこ

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 たかぎなおこの『浮き草デイズ』(文藝春秋/全2巻/各1000円)を読んだ。

 いまやイラスト・エッセイの世界で売れっ子となった著者が、イラストレーターを目指して上京し、『150cmライフ。』で本格デビューするまでの雌伏の5年間を描いたもの。彼女の著作の多くがコマ割りなしのイラスト・エッセイであるのに対し、本作はちゃんとコマ割りもされてコミック・エッセイになっている。

 私がこの著者のことを知ったのは、前川やくさん(※)の「スレッジハンマーウェブ」内の別サイト「ちびせん」(→こちら)でのことだった。

※ふと検索してみたところ、前川さんが「フレンチパピロ」なるサイト(→こちら)で復活しているのを発見。相変わらず面白い。

 「ちびせん」は、「身長155㎝以下の小柄な女性が好き」(ロリコンとイコールではない)というやくさんの好みを全開させた楽しいサイト(すでに更新終了)。『150cmライフ。』は、身長150㎝のたかぎなおこがちびならではの悲喜こもごもをほのぼのと描いたイラスト・エッセイなので、「ちびせん」で紹介されたのは必然であった。

 じつは私にも「ちびせん」傾向があるので(背の高い女性は威圧感を覚えるので苦手w)、『150cmライフ。』もさっそく読んだものだった。

 その『150cmライフ。』はたかぎなおこの単行本デビュー作であり、出世作でもある。続編も出ているし、タイ・韓国・中国・台湾でも翻訳刊行されている。また、それ以外の著作も次々と刊行されている。
 正直なところ、『150cmライフ。』を読んだときには、これほど売れっ子になるとは夢にも思わなかった。

 さて、この『浮き草デイズ』、じつに地味な作品である。
 西原理恵子の半生のような波瀾万丈な要素は微塵もないし、恋愛要素も絶無(著者の恋人はおろかボーイフレンドも登場せず、あこがれの男性のたぐいもいっさい出てこない)。
 著者は、「イラストレーターとして一本立ちしたい」という思いを抱えて悶々としつつ、ビンボーなひとり暮らしをしてさまざまなアルバイトをする……だけなのだ。

 ただそれだけの話なのに、私にはたいへん面白かった。てゆーか、すごく身につまされた。イラストレーターとライターという分野の違いこそあれ、著者が夢を抱えて悶々とする様子が、私には上京直後の自分とオーバーラップしてならなかったからである。

「だいたい 私ってなにやってんだろう…
イラストレーターになりたいって東京に出てきたのに実際にやってるのは…
このせまい部屋を借りて生活していくだけでいっぱいいっぱい…」



 ……などという著者の焦燥の一つひとつが、また、将来に一筋の希望が見えたときの飛び上がるような歓喜が、私にはわかりすぎるほどわかる。

 ドラマティックなサクセス・ストーリーではなく、グレイトな天才の物語でもなく、もっとありふれた、東京にはたくさん転がっている、「何者かになりたい平凡な若者」の悪戦苦闘の物語。分野を問わず、表現者になろうという夢を抱いて都会にやってきた人なら共感できる作品だと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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