宇多丸『ザ・シネマハスラー』


TAMAFLE BOOK 『ザ・シネマハスラー』TAMAFLE BOOK 『ザ・シネマハスラー』
(2010/02/27)
宇多丸

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 TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」編『ザ・シネマハスラー』(白夜書房/1600円)読了。
 
 TBSラジオの番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の人気コーナー「ザ・シネマハスラー」の単行本化。
 番組パーソナリティーの宇多丸が、サイコロで無作為に選んだ上映中の映画を鑑賞し、その映画について30分近くトークするというコーナー……らしい。じつは私は聴いたことがない。

 たぶん、番組のファンが本書を読んだら、「実際の番組の面白さよりは、一段も二段も落ちる」という印象なのだろう。演劇をテレビの録画で観るようなもの、落語を文字起こしで読むようなものだから。もっとも、元の番組を知らない私には十分楽しめたけど。
 というわけで、以下は純粋に本としての感想である。

 みうらじゅんがやっているような、映画をネタにしたお笑いコラム的なものを想像していたのだが、読んでみると意外にまっとうな映画批評だった。とはいえ、プロパーの映画評論家が書くようなものとはやはり違って、「語り口自体の面白さ」のウエイトが大きい。
 そして、笑えるフレーズや「座布団一枚!」な決めのフレーズが、随所にちりばめられている。

 サイコロを振って観る映画を決めるやり方ゆえ、当人が観たくない映画が当たることも多いわけだが、読む側としてはむしろ、“観たくない映画を観てつまらなかったとき、悪口を言いまくる回”のほうが面白い。悪口がきちんと「芸」になっているのだ。たとえば――。

 こんな脚本書いた人は、国家の体制によっては銃殺ですよ! (『カンフーくん』について)



 なんかおどけたことをやれば面白いでしょ? ベロベロバ~ってやれば笑うでしょ?って、徹頭徹尾そういう考え方なのね。バカにすんなよ! 赤ちゃん扱いするならさっきの1800円返せよ! 大人料金払っちゃったからさ!!っていう。(『ハンサム★スーツ』について)



 思うにこのつくり手たちは、アクションとかVFX以外のところ――例えば普通の会話シーンとか――は、映画にとって「死に時間」だとでも思ってるんじゃないですか?  だからこんなおざなりな撮り方をする。(『K-20 怪人二十面相・伝』について)



 なお、宇多丸は「つまらなそうな映画をわざわざ観に行って文句を言うこと」を、「当たり屋」と称している(笑)。言い得て妙ですな。

 とはいえ、つまらない映画をけなす回ばかりではなく、傑作をホメる回もある。そのホメ方が、きちんとした鋭い批評になっている回が多くて感心した。

 たとえば、中居正広版の『私は貝になりたい』を過去の3ヴァージョンと比較したうえで傑作と評価した回、『アラビアのロレンス』(のニュープリント上映)を取り上げた回などは、軽い語り口ながらも内容は見事な批評だ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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