山本一郎『ネットビジネスの終わり』

ネットビジネスの終わり (Voice select)ネットビジネスの終わり (Voice select)
(2009/10/22)
山本 一郎

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 山本一郎著『ネットビジネスの終わり――ポスト情報革命時代の読み方』(PHP研究所/1000円)読了。著者はアルファブロガー「切込隊長」として知られる人。

 タイトルにやや難あり。ネットビジネスの「終わり」について論じているのは、全4章のうち最終章のみなのだ。
 ほかの3章ではそれぞれ、日本の製造業が直面する難局(1章)、日本の新聞・テレビが直面する「瀕死」の惨状(2章)、日本のアニメ/ゲーム業界が産業としていかに脆弱であるか(3章)が論じられている。

 各章ともネットビジネスの話がからんではくるのだが、1~3章はむしろ、“ネットの勃興とグローバリゼーションによって旧来的産業が終わりつつある”という話であり、全体を『ネットビジネスの終わり』とくくることには違和感がある。
 とはいえ、内容はなかなか。

 1章は、私に製造業についての知識がまるでないので、「はあ。そういうもんですか」という感想しか持てなかった。

 が、メディア産業の「瀕死」状態を論じた2章は、類書をいくつか読んでいて、なおかつメディア産業の片隅に暮らす当事者でもある私から見ても、新鮮な内容だった。
 圧巻は、米国の新聞業界が売り上げ激減の苦境を脱しようと、あの手この手の打開策を展開したさまを紹介したくだり。これ以上もう打つ手がないというくらい新聞各社がさまざまな企業努力をするのだが、まったく効果がなく、新聞社の破綻が相次いでいるという。

 ある新聞は、紙が赤字でウェブ部門が黒字だったため、紙の新聞を廃止してウェブのみにするという大改革を行なった。ところが、そのとたんに黒字だったウェブ部門まで赤字になってしまったという(!)。ううむ……。
 この章で詳述されている米新聞業界の惨状は、あと2、3年のうちには日本の新聞社にも起きる事態だろう。

 3章も、日本が世界に誇る産業であるかのようなイメージすらあるアニメ/ゲーム業界の、産業としての弱さを冷静に解説して目からウロコ。

 ただ、タイトルから考えて本書の目玉であるはずの第4章「情報革命ブームの終焉」は、イマイチだった。グーグルを「バベルの塔」になぞらえたりして、この章だけやたらと話が大仰で、全体から浮いているのだ。

 それと、この人は自分のブログに書く文章はわかりやすくて面白いのに、著書の文章はどうしてこんなに生硬なのだろう?
 たとえば――。

 アニメは当たれば大きいと言いつつ、稼げるコンテンツはシリーズ化していてテレビ局ごとに囲い込まれている。そのため、修羅の如き高収益を誇る数少ないコンテンツが、涙も乾き果てた砂漠もかくやと思う赤字に喘ぐコンテンツが大多数を占める産業全体の利益率を平均値で引きずり上げている構図がある。(太字強調は引用者)



 先日三橋貴明の本を読んだときにも同じことを感じたが、著書だからといって身構えすぎなのではないか。ブログと同じようにやわらかい文章で書けばよいのである。

 ……と、ケチをつけてしまったが、2~3章は一読の価値あり。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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