ツイッターは「時間食い虫」――『Twitterの衝撃』を読んで

Twitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変えるTwitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変える
(2009/11/05)
枝 洋樹林 信行

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 日経BP社出版局編『Twitterの衝撃――140文字がビジネスからメディアまで変える』(日経BP社/1470円)読了。

 猫も杓子もツイッター、ツイッターとかまびすしい昨今なので、「どういうものか知っておかないとな」ってことで読んでみた本。

 元は「日経ビジネスオンライン」に連載されたものだそうで、ツイッターにくわしい識者10人が1章ずつ担当している。執筆陣は以下のとおり。

第1章 枝 洋樹 DGインキュベーション 投資・事業開発本部 マネージャー
第2章 林 信行 ITジャーナリスト
第3章 小林 弘人 インフォバーン CEO
第4章 津田 大介 ジャーナリスト
第5章 武田 徹 評論家、ジャーナリスト
第6章 高須賀 宣 サイボウズ 創業者
第7章 岡野原 大輔 プリファードインフラストラクチャー 特別研究員
第8章 片瀬 京子 ライター
第9章 高橋 秀和 日経BP社 ITPro 記者
第10章 亀津 敦 野村総合研究所 情報技術本部 技術調査部 主任研究員



 ツイッターとは何かという基礎知識から、ツイッターがどのようにメディアやビジネス、個人の生活を変えつつあるのかという解説まで、いろんな論点がまんべんなくそろっており、入門書としては過不足ない出来。
 書き手の力量の差もあって玉石混淆だが、小林弘人による第3章などはメディア論としても秀逸なものになっている。

 ただ、本の性質上仕方ないことではあるが、あまりにもツイッターのプラス面に偏りすぎだと思った。
 本書の中でツイッターのマイナス面に触れているのは、わずかに第10章の亀津敦のみ。「誰もが気軽につぶやきを公開できるTwitterは、使いようによってはリスクを伴うことも理解する必要がある」と、ツイッター上の「失言」が招く筆禍(舌禍か?)などにちらっと触れているだけなのだ。あとはすべて、“ツイッターで個人も企業もバラ色!”みたいなおめでたい楽観論ばかりである。

 それは、本書にかぎったことではない。一連の「ツイッター本」や雑誌・サイトのツイッター特集は、ツイッターのマイナス面から目をそらしている印象がある。

 管見の範囲では、例外として、『ニューズウィーク』の「トゥイッターのアホさは最強だ」という記事や、小田嶋隆が「ア・ピース・オブ・警句」でツイッターを取り上げた回が目についた程度。
 そして私には、世にあふれるツイッター礼讃より、この2つの記事が示したツイッターへの危惧のほうが、はるかに得心がいったのである。

 ツイッターが画期的なのはわかった。使いようによってはビジネスや情報収集やお友達作りに絶大な効果を発揮することもわかった。
 でも、私はツイッターをやらないことに決めた(外から眺めることはあっても、自分では)。
 理由は一つ。ツイッターがハマるとコワイ「時間食い虫」だからである。

 「ストローク」という心理学用語がある。
 「ある人の存在や価値を認めるための言動や働きかけ」のことで、親が子どもの頭をなでることから上司が部下をほめること、あるいは「おはよう」などというあいさつに至るまでの幅広い行動が、「ストローク」に含まれる。
 また、肯定的な行動だけがストロークなのではない。叱られること、罵倒されることなどは「否定的ストローク」と呼ばれる。

 ツイッターは、正負両面のストロークに満ちている。
 むろん、ブログだってミクシィ等のSNSだってストロークに満ちているのだが、ツイッターはその仕組み上、ブログやSNS以上にストロークを得やすい。ゆえにハマリやすく中毒性が高い。
 ブログの中毒性とヤバさがタバコ程度だとしたら、ミクシィは大麻程度であり、ツイッターには覚醒剤級のヤバさがあると思う。

 「ケータイとの親和性」がツイッターの強みとして語られるが、私には強みではなく「ヤバさ」に思える。どこでもできるということは、それだけハマりが深くなるということなのだから……。
 すき間時間にだっていろんなことができるのに、そのすき間をすべてツイッターで埋め尽くしてしまうなんて、ものすごい人生の浪費ではないか。

 ハマったりせず適度な距離を置いてツイッターとつきあえる自制心の持ち主なら、ツイッターのメリットだけを享受することも可能だろう。だが、私には自分が「物事にハマりやすい」という自覚があるのだ。

 ツイッター同様、私が「『時間食い虫』だからやらないと決めていること」に、SNSとゲームがある。だから、私はいまだに「ドラゴンクエスト」も「ファイナルファンタジー」も名前くらいしか知らないし、ミクシィ等ものぞいたことがない。
 ゲームもミクシィもツイッターも、やれば楽しいのはよくわかる。やらないことは大きな人生の損失かもしれない。時代に取り残されるかもしれない。

 でも、べつにいいのだ。「私というリソース」は有限なのだし、私にはほかにやることが山ほどあるのだから……。
 ネットへの窓口は、このブログだけで十分。これ以上、ハマるとコワイ「時間食い虫」には近づきたくないのである。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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