ケント・E・カルダー『日米同盟の静かなる危機』

日米同盟の静かなる危機日米同盟の静かなる危機
(2008/11)
ケント・E・カルダー

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 ケント・E・カルダー著、渡辺将人訳『日米同盟の静かなる危機』(ウェッジ/2520円)読了。

 1年以上前に出た本だが、鳩山政権の迷走で日米同盟に不協和音が生じているいまこそ、広く読まれるべき書。エドウィン・ライシャワーの弟子筋にあたる国際政治学者で、日米同盟研究の第一人者である著者が、日米同盟の歴史・現状・展望をつぶさに論じた研究書だ。

 けっして平明とは言えない論文色の濃い内容だが、さまざまな要素が複雑にからみ合う日米同盟問題を鮮やかに腑分けする著者の手際は見事なものだ。

 著者は“日米同盟を堅持し、今後いっそう強化につとめるべし”と考える立場だが、なぜそう考えるのかという理由が、さまざまな角度から明快に説明されていく。そこには、イデオロギッシュな偏りなど微塵もない。あるのはただ、リスクとベネフィットを秤にかける冷徹なリアリズムのみである。
 そう、半世紀前に結ばれた日米同盟は、いまなお日米双方にとって、とりわけ日本にとって大きなメリットがあり、だからこそ同盟の堅持につとめるべきだと著者は言うのだ。

 台頭する中国との軍拡競争の危険性があり、北朝鮮に大量破壊兵器能力が生まれ、中東へのシーレーン防衛や日米関係を確実に安定させる必要性もある。アメリカと同盟を組むことは、アメリカの地政学的な優位性、グローバルなインテリジェンス収集能力、日本の繁栄に死活的なグローバルな金融、貿易システムの安定化への貢献という点でとりわけ日本にとって魅力がある。



 本書は日米同盟について考えるための基本文献となり得るものだが、同時に、国家間の同盟関係そのものを考えるうえでも示唆に富むものである。というのも、著者はそもそも「同盟」とは何かという概念規定についても深く掘り下げており、同時に、過去の代表的な国家間同盟(日英同盟、英米同盟など)と日米同盟との比較にも一章を割いているからだ。

 本書は、懇切丁寧な“日米同盟入門”であると同時に、国家間同盟をフィルターとした国際政治学入門でもある。そして何より、半世紀前に結ばれた日米同盟を、グローバル化の進む21世紀にふさわしいものにアレンジする「日米同盟ルネサンス」の方途を探った意欲作でもある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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