中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』


ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
(2009/04/17)
中川淳一郎

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 中川淳一郎著『ウェブはバカと暇人のもの――現場からのネット敗北宣言』(光文社新書/798円)読了。

 ニュースサイトの編集者(「日刊アメーバニュース」編集責任者)をつとめる著者が、インターネットのネガティブな側面をグリグリとえぐり出す現場報告。本書の中でもくり返し言及される梅田望夫のベストセラー『ウェブ進化論』への、アンサーソングならぬ“アンサーブック”ともいうべき一冊。

 私はネットの使い方・発信情報について、「頭の良い人」「普通の人」「バカ」に分けて考えたい。梅田氏の話は「頭の良い人」にまつわる話であり、私は本書で「普通の人」「バカ」にまつわる話をする。



 ネットが育む「集合知」についての夢を語る梅田望夫に対し、著者はネットが増幅する「集合愚」を慨嘆する。リアル世界では平凡で無害な人間が、ネットの匿名世界で暴走し、集団クレーマーと化し、安全圏から弱者を吊し上げる例など、「集合愚」の例がこれでもかとばかり列挙されていく。

 90年代中盤までのネット黎明期はさておき、いまやネットは最も安価な娯楽と化し、バカと暇人ばかりが幅をきかせているではないか。なーにが「Web2・0」だ……という感じの本。

 仕事でネットの現場最前線に立ち、「バカと暇人」からのクレーム等に日々さらされている人の言だけに、著者の主張には重い説得力がある。

 著者が言うネットの負の側面について、ネットを日常的に利用する者なら誰もが知っているわけだが、それでも「そんなの知ってらあ!」という感じにはならず、面白く読める。ネットの負の側面について、著者のように語った人はいそうでいなかったからである。
 著者は、眉根にシワ寄せて「ネットの闇が」うんぬんと正義を振りかざしたりはしない。もっと軽快かつアイロニカルに、梅田望夫に代表されるネット理想論を、論点ごとに反証を挙げて笑い飛ばしてみせるのだ。

 とくに面白いのは、第3章「ネットで流行るのは結局『テレビネタ』」と、第4章「企業はネットに期待しすぎるな」。

 前者は、「テレビの時代はもう終わった。いまはネットの時代だ」というしたり顔の通説に冷水をぶっかけて痛快。著者はネット最前線での見聞をふまえ、「最強メディアは地上波テレビ。彼らが最強である時代はしばらく続く」と断言する。

 後者は、企業等でネットにかかわる部署にいる人は必読の内容だ。
 著者は「ネットでブランディングはできない」「先にバカをした企業がライバルに勝利する」(以上、小見出しタイトル)と言い切り、次のように結論づける。

 (企業は)ネットでバカなこと、B級なことができないのであれば、ネットでは最低限の情報公開を除き、何もすべきではない。クリックされず、さらにリスクを恐れている状況では、ネットを使いこなせるわけがないのだ。



 書名から想像した内容よりもずっと面白く、深みもある本だった。

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コメント

Re: タイトルなし
里菜子さん、こんにちは。

わりとゲラゲラ笑える愉しい本でしたよ。
タイトルのわりに「上から目線」ではないし。
オススメです。
いつも楽しく読んでます。
私は「ネットは貧乏の娯楽」だと思っています。
早速読んでみます
  • 2009-07-05│19:15 |
  • 里奈子 URL│
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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