根本敬『真理先生』

真理先生真理先生
(2009/01)
根本 敬

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 根本敬著『真理先生』(青林工藝舎/1680円)読了。

 「特殊漫画家」根本敬は、今年前半、3ヵ月連続で著書(マンガ以外の)を刊行した。先日読んだ『特殊まんが-前衛の-道』はその第3弾にあたり、第1弾が本書である。

 まるで大昔の小説のような書名と装丁。同題の武者小路実篤の名作と間違えて手に取る人もいるかもしれない。しかし、中身はいつもの根本ワールドで、実篤とは似ても似つかない。

 基本はエッセイ集だが、全3章のうちの第2章がなんと小説になっている。根本敬にとっては初の小説。分量からいったら短編なのだが、ヘタな長編顔負けの濃さをもつ、ある老人の一代記である。

 後半に、根本敬作品でおなじみのキャラクター・吉田佐吉が登場してくる(もっとも、作中には「吉田」としか書かれていないのだが、ファンなら吉田佐吉であることがすぐわかる)。そして、そこから俄然面白くなる。前半は読みづらくてかったるいので、そこで投げ出さないように。

 そして、最後まで読み終えたあとでもう一度初めから読んでみると、かったるく思えた前半も面白く感じられる。根本のマンガをそのまま小説に置き換えたような、彼以外には書き得ない作品。もしかしたら、根本敬は町田康のように小説家に大化けするかもしれない。

 小説を間に挟む形で並んだエッセイも、いつもながらのハイ・ボルテージ。
 ここにあるのは、世にあるエッセイに対するオルタナティヴであり、世のまっとうな生き方、まっとうな物の見方の反対側に突き抜けた「真理」を教えてくれるものである。
 本書に収められた22編のエッセイのうち何編かは、何度も読み返して熟読玩味する価値をもつものだ。

 私がとくに気に入ったエッセイのタイトルを挙げておく。 
 「さぶ・カトちゃん」、「男にとって甲斐性とは」、「ストーンズのライヴ(確かめに行ったもの)」、「もう一人の俺」、「赤塚先生から赤塚と呼び捨てになった時」(赤塚不二夫追悼文)……。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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