根本敬『特殊まんが-前衛の-道』

特殊まんが-前衛の-道特殊まんが-前衛の-道
(2009/04/03)
根本 敬

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 根本敬著『特殊まんが-前衛の-道』(東京キララ社/1890円)読了。

 「特殊漫画家」根本敬の最新エッセイ集。
 アイカワタケシによる表紙イラストがものすごい。じっと見ていると酩酊しそうだ。
 中身もしかりで、「読むドラッグ」という趣。誰にも真似のできないねじれた文体で、特殊漫画家としての歩み(少年時代のマンガとの出合いから、現在の“特殊な地位”を築くまで)が綴られている。

 合間に、勝新太郎、内田裕也、「突然ダンボール」(バンド)などといった、根本にとっての「注目すべき人々」との出会いを綴った章が挟まれる。

 巻末には、じつに80ページにわたる天久聖一との対談を収録。ごく一部のヤバイ話(らしい)がカットされているほかは、なんのトリートメントもせずに対談のテープ起こしがそのまま載せてある感じ。

 特殊漫画家生活の舞台裏で生まれた、笑えるエピソード満載だ。
 たとえば、根本敬のことを勘違いした編集者から「普通のマンガ」の仕事依頼がきた際、根本が面白がってその注文を受け、堂々といつもの根本マンガを描いて相手を驚愕させる、というエピソード。
 人もあろうに、根本に対して「金のある出版社」から「学習まんが」の注文があったのだという(!)。

 そして、編集者はこのわたしに、こう注文した。
「『セクシー・コマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』のイメージでお願いします」
 それを耳にして、このわたしが喜ばぬ訳がない。
(中略)
 果たして出来上がった「学習まんが」は当然、二度と発注が来る様なものであるはずがなかった。



 印象に残った一節を、メモ。これは根本敬の矜持がにじむ名言だと思う。

 次代を担う新しいものは決してメジャー側から生まれることはなく、仮にメジャーから生まれた様に見えても、元ネタは「マイナー」の中より無名をいいことに剽窃したものなのである。
(中略)
 やがて新しいものへと連なる表現行為の類いは、マイナー以前の所に居る無名の若者の、まずは「やりたい」という全身体的な、理屈以前の衝動から始まるものである。



 また、根本との対談で天久聖一が語る、“読者と消費者は違う”という話も面白い。メジャー誌の編集者から言われた「読者の事、考えろ」という言葉についての発言だ。

天久 でもその読者って 出版社が想定してる「消費者」の事じゃないですか。僕が思ってる「読者」っていうのと、それを売る側が考えてる「消費者」っていうのは、全然ズレてて、違うし、僕、もっと狭いから(笑)。



 おそらく、根本もそのように感じていることだろう。

 「根本ワールド」全開で、とても万人にオススメできるようなものではないが、“根本作品を受け入れられる人”なら面白い本。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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