『スラムドッグ$ミリオネア』


スラムドッグ$ミリオネア [DVD]スラムドッグ$ミリオネア [DVD]
(2009/10/23)
デーブ・パテル、アニール・カプール 他

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 立川シネマシティで『スラムドッグ$ミリオネア』を観た。
 言わずと知れた、今年度アカデミー賞最多8部門(作品賞、監督賞含む)受賞作である。

 公式サイト→ http://slumdog.gyao.jp/site/

 じつによかった。ストーリーがまるで一本の太い動脈のよう。少しも脇道にそれず、ラストシーンに向かって一直線に熱い血潮を運んでいく感じなのだ。
 観る者を気持ちよくだましてくれる、大人のためのおとぎ話――。

 社会性と娯楽性がハイレベルでせめぎ合い、両者のちょうど真ん中でピタリと針が止まっている。
 主人公たち――ムンバイのスラムの子供たちの人生は、この映画に描かれている程度には過酷なのだと思う。つい数日前にも、こんなニュースが飛び込んできた。

[ムンバイ 20日 ロイター] インドの警察当局は、映画「スラムドッグ$ミリオネア」に出演した女児を、父親が20万ポンド(約2800万円)で売ろうとしたと疑いで捜査をしている。
 同映画でヒロインの幼少時代を演じたルビーナ・アリちゃん(9)は、父親と義母とともにスラム街で生活しており、家族に高額の養子縁組を持ちかけた英タブロイド誌ニューズ・オブ・ザ・ワールドのおとり取材は、インドでも大々的に報じられた。この報道を知った母親が19日、警察に届け出たという。



 インドの超・下層社会の現実を直視しつつ、ダニー・ボイル監督は持ち前のポップなセンスで、物語を極上のおとぎ話として織り上げていく。映像自体が心地よい音楽のようで、うずたかく積み上がるスラム街のゴミの山すら、スクリーンの中ではいきいきと美しい。

 ストーリーについては、すでにさんざん各メディアで紹介されているので、ここでは触れない。
 誰もが知る人気テレビ番組(日本版は、みのもんたの司会で知られた『クイズ・ミリオネア』)を、こんなふうにストーリーに織り込むアイデアがすごい(原作はヴィカス・スワラップの小説『ぼくと1ルピーの神様』)。
 「あんなに都合よく、主人公の人生に重なる問題ばかりが出るわけがない」と誰もが思うだろうが、思うだけにとどめよう。口に出すのは野暮というものだ。これはおとぎ話なのだから……。

 何より素晴らしいのは、観る者に希望と勇気を与えるおとぎ話である、という点だ。こんなふうにシンプルで力強い映画こそが、数十年後に古典として残るのだろう。

 
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【映画評】スラムドッグ$ミリオネア

インドのスラム街育ちで無学の青年が、世界的超有名クイズ番組『クイズ$ミリオネア』で正解し続けるに至った過酷な半生を描くヒューマン・ドラマ。

コメント

Re: タイトルなし
コウさま

よい映画でしたので、オススメです。
こんにちは。
そうですね、「シンプルで力強い」は、特に現在の世界に最も必要な価値観のひとつだと思います。
あざとい変化球などではなく、愚直なまでに全力で放り込んでくる直球が心地良いです。
(もちろん職人魂を感じさせくれる七色の変化球も大好きなのですけどね)
  • 2009-04-25│09:09 |
  • コウ URL│
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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