田中孝彦ほか編『〈戦争〉のあとに』

〈戦争〉のあとに―ヨーロッパの和解と寛容〈戦争〉のあとに―ヨーロッパの和解と寛容
(2008/12/12)
田中 孝彦

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 田中孝彦・青木人志編『〈戦争〉のあとに』(勁草書房/2940円)読了。

 冷戦終結から早20年がすぎようとしているが、冷戦に代わる新たな国際秩序はいまだ見えてこない。我々は、混沌とした長い「秩序転換期」を生きているのだ。

 唯一の超大国となった米国による「帝国的秩序」に期待をかける向きもあったが、ブッシュ前政権の単独主義的行動は国際社会の強い反発を招き、むしろ米国の秩序形成能力は大きく低下した。
 そうしたなか、米国に代わって存在感を増しつつあるのが、EU(欧州連合)を核に新たな国際秩序のモデルを確立しつつあるヨーロッパである。

 ヨーロッパが新秩序に向けてのトップランナーたり得たのは、そこにひしめき合う国々が長く激しい衝突の歴史を乗り越えてきたからこそだ。本書の「はしがき」で編者も言うように、「大戦争をきっかけとして、幾度も秩序転換を経験してきた」ヨーロッパの歴史は、「秩序の転換期に当時の人々がどのように対処し何を構想したのかを知るための、知見や教訓の宝庫」なのだ。

 本書は、ヨーロッパの国際関係史から、現在の混沌を乗り越え平和的秩序を打ち立てるヒントを抽出しようとする論文集である。本書が扱うのは書名のとおり、世界大戦後の歴史である。冷戦期も「擬似的戦争」ととらえ、第1次大戦後から冷戦終焉直後までが分析の対象となる。

 論考を寄せているのは、国際政治学、国際政治史、法律学、経済学などの俊英研究者10人。それぞれの専門分野を活かした多様な角度から、ヨーロッパ諸国が衝突(戦争)から対立・寛容・和解へと進むプロセスをくり返すなかで、「戦争の起こりにくい秩序を形成しようとする」試行錯誤を重ねてきた道筋をたどっている。

 外交関係を扱った論文が中心となるが、くわえて、戦間期ヨーロッパの文学・思想運動を振り返った論文があるなど、その時代の文化や社会のあり方にも光を当てているのが、本書の特長である。

 また、各論文では米国とヨーロッパとの間の相互作用にも、分析のメスがふるわれる。その意味で本書は、米国とヨーロッパの“世界秩序の主導権争い”の歴史をたどったものでもある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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