信田さよ子『アダルト・チルドレンという物語』

2009年01月13日 14:18

アダルト・チルドレンという物語 (文春文庫)アダルト・チルドレンという物語 (文春文庫)
(2001/04)
信田 さよ子

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 信田さよ子著『アダルト・チルドレンという物語』(文春文庫/580円)読了。
 『母が重くてたまらない』と『依存症』がよかったので、同じ著者のべつの本を読んでみた。読む順番が逆になってしまったが、本書は著者にとって最初の著作である(元本は96年刊)。

 本書の単行本時のタイトルは、『「アダルト・チルドレン」完全理解』というものだった。その書名のとおり、「アダルト・チルドレン(AC)」についての概説書である。 「AC」という概念が生まれた経緯から説き起こし、著者自身のカウンセリング経験をふまえて豊富な実例を示し、後半ではACの「生きづらさ」を克服する道筋まで示している。

 周知のとおり、ACはもともとは子ども時代にアルコール依存症の親のもとで育った人を指したが、しだいに裾野が広がり、「機能不全家族」の中で育って「生きづらさ」を抱えている人すべてを指すようになった。
 著者による概念規定はさらに簡潔で、「自分の生きづらさが親との関係に起因すると思う人」はみなACなのだという。

 信田さよ子の本は、わかりやすくて深い。本書もしかり。ACの概説書としても優れているし、現代の家族問題、親子問題を考えるにあたって示唆に富む好著であった。

 以下、印象に残った一節を抜き書きする。

 感情というものは、包丁のように、使わないと錆びてしまいます。



 実際問題として、子どもたちはどんなことで傷ついていたのでしょうか。父親に殴られることや、父親が昼間から飲んで暴れるというようなことだったのでしょうか。いいえ、違うのです。このような理由は、三番目か四番目でしかないのです。
 アルコール依存症の家族に育った子どもたちがいちばん傷ついているのは、夫婦のいさかいなのです。父と母とのあいだに繰り返されるドラマをずっと見ていること、その観客でいることのおびえ、自分のせいではないかという罪悪感。これらのほうが、直接殴られるより子どもにとってははるかに苦痛です。


 

 子どもにとって、家族の崩壊は世界の崩壊です。家族を離れては生きられません。世界そのものなのです。もし自分が維持しなければこの家族は壊れるのではないかという恐怖感にさらさられると、子どもが懸命に家族を、親を支え、守るという倒錯が生じます。



 記憶を重りにたとえた場合、重りで自分自身というはかりが壊れたら困るので、はかりが壊れてしまうような重りは乗らないようになっています。そのような記憶は、全部忘却、あるいは否認という形で底に沈んでいて、その人がだんだん力をつけてきて、はかりの耐える重量が上がってくると、底にある記憶が浮かんでくるのです。だから、新しいことを思い出すということは、その人がある記憶を抱えられるだけに回復したり、変化したことの証です。



 世の中に、よく親を殺したいと言う人がいますが、あの気持ちはどこから出てくるのでしょうか。これはまだ親との関係が清算されていないからです。殺したいというほどの憎悪は愛情の裏返しで、もっといい親になってもっと自分をなんとかしてほしいという“要求”がどこかに残っているのです。



 本当の自尊心とは幻想をはぎ取って自分を見つめ、その自分を愛していくことではないでしょうか。






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