中山康樹『ビートルズの謎』

2008年12月29日 00:00

ビートルズの謎 (講談社現代新書)ビートルズの謎 (講談社現代新書)
(2008/11/19)
中山 康樹

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 中山康樹著『ビートルズの謎』(講談社現代新書/798円)読了。

 この著者のビートルズ本は、同じ講談社現代新書の『これがビートルズだ』を読んだことがある(→当ブログのレビュー)。

 『これがビートルズだ』はビートルズの「全曲制覇本」であったが、今回の本は書名のとおり、ビートルズをめぐるさまざまな謎に迫ったもの。

 といっても、「ベートーヴェンの手紙に登場する『不滅の恋人』とは誰のことか?」とか、「モーツァルトが毒殺されたとすれば、犯人は誰か?」のような、音楽史に残る大きな謎がビートルズにあるわけではない。もっとトリヴィアルな、ありていに言えばビートルマニア以外にとってはどうでもいい謎ばかりが、俎上に載る。

 たとえば、第1章は「レイモンド・ジョーンズは実在したか?」。
 レイモンド・ジョーンズとは、ブライアン・エプスタインがかつて経営していたレコード店に、デビュー前のビートルズのレコードを求めてやってきた青年。もしも彼がたまたまやってこなければ、エプスタインがビートルズと接触することもなく、彼が敏腕マネージャーとなってビートルズを売り出すこともなかっただろう。
 エプスタインと出会わなくてもビートルズが埋もれてしまうことはなかっただろうが、少なくとも彼らが歩んだ道筋はかなり違ったものになっただろう。

 ビートルズ伝説を語るにあたって、見落とせない重要な存在であるレイモンド・ジョーンズ。だが、この青年はほんとうにいたのか? エプスタインが作り上げた架空の人物ではなかったか?  著者はそんな疑問を投げかけ、さまざまな文献・データを渉猟して、ジョーンズが実在したか否かの謎解きを行なっていく。
 その謎解きのプロセスにはミステリーのような面白さがあるのだが、いかんせん、それを面白がるためにはビートルマニアでなければならない。それ以外の人々にとっては、レイモンド・ジョーンズが実在しようがしまいが、どうでもいいことだからだ。

 そのように、各1章を割いて行なわれる謎解きが、全部で8つ。ほかに、さらにトリヴィアルな謎解きがなされるコラムが章間に挟まれている。

 中山康樹の本は、音楽の評価に自分の主観を押しつける強引さがあって、そこが苦手だという人も多いだろう。しかし、本書はビートルズの音楽そのものより周辺に光を当てる内容なので、彼の本らしからぬ冷静な筆致で書かれている(得意のフレーズ「くーっ! たまらん」も出てこない)。

 ビートルマニアのハシクレである私にさえ「どうでもいい」としか思えない章もあるが、以下に挙げる2つの章はたいへん面白かった。

第3章 『ラバーソウル』VS.『ペットサウンズ』伝説の死角を検証する
第5章 『リヴォルバー』はどうして“回転式連発銃”なのか

 この章題を見て、「お、面白そうだな」と思える人にとっては一読の価値あり。「なんのことだかわからない」という人は読まないほうが無難。明らかにビートルマニアに向けて書かれており、それ以外の読者は眼中にない本である。



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